日本化学工業、リチウムイオン電池向け電解液不燃化材料を事業化
日本化学工業、リチウムイオン電池向け電解液用の不燃化材料を事業化
~ブリヂストンと日本化学工業、電解液用不燃添加剤で独占的ライセンス契約を締結~
今回、日本化学工業株式会社(本社:東京都江東区、社長:佐藤源一)はブリヂストンからリチウムイオン電池用の電解液不燃化材料の独占的な製造・販売権を取得し、事業化することを決定致しました。
日本化学工業は、赤燐系を主体にした無機系難燃剤のほか、日本化学工業の独自技術であるホスフィン誘導体を中心とした有機リン系難燃剤の開発にも力を入れており、有機事業の主力テーマとして難燃剤事業を展開しています。その難燃剤事業の一環として、各種ホスファゼン化合物によるリチウムイオン電池の不燃化技術の開発検討を長年に亘り行ってきました。その中で、ブリヂストンとは、お互いの分担を持ってリチウムイオン電池の不燃化についての開発をしてきました。二社間では、日本化学工業は長年のリン系化合物の合成技術の経験を生かしてホスファゼン化合物の製造化技術の開発を担当してきました。
今回の決定の背景には、日本化学工業はリチウムイオン電池の正極材について製造販売を行っており、業界に精通していること、ホスファゼン化合物も含めた有機リン化合物の製造技術の蓄積があり、各種プラントを所有していることがあります。
リチウムイオン電池は、高容量にリチウムイオンを挿入・脱離することができる化合物を正極及び負極に用いた、高エネルギー密度の二次電池であり、既に携帯電話やノート型パソコンの電源として広く普及しています。今後は、ハイブリッド車や電動工具などの主電源としても、その活用が期待されています。しかしながら、リチウムイオン電池は電解液に可燃性の有機溶媒が用いられており、電池が異常充電されたり、高温にさらされたりすると、破裂・発火に至ることがあります。これを未然に防ぐために、電池には保護回路が装着されていますが、電池をより安全に使用する観点からは、電池の本質的な安全化が望まれます。また、一般的な使用においても、電池が加圧状態になった場合には、可燃性の有機溶媒が電池のガス抜き弁から漏洩することがあり、これに引火することも考えられます。そのため、特に大量の電解液を使用する大型電池においては、より細心の注意を払った安全設計が必要とされています。今回、日本化学工業から販売するホスファゼン化合物は、電解液にあらかじめ添加しておくことで、電解液の分解の際に生じる反応性の高い物質を捕捉する効果があり、また気相中でも不燃効果を発揮する優れた化合物です。高い不燃化作用を示しながら、添加に伴う電池特性の低下は他の添加剤と比較すると非常に小さいのが特徴です。
添加剤に使用されるホスファゼンは、燐と窒素を主成分とした環状型化合物であり、現状の電解液に5 から10%添加することで、不燃化や発熱抑制効果が確認されています。これにより現在、リチウムイオン電池で課題となっている発熱、発火事故に対する安全性を大幅に高めることができます。
このホスファゼン化合物の市場性としては、現在の小型リチウムイオン電池の用途に使用されることは勿論のこと、先にも述べた、自動車向けを含む大型用途としての需要展開が期待されています。
今後の予定として、日本化学工業では2007年中にホスファゼン化合物の供給体制を確立する予定です。化審法の届け出に合わせ、2007年12月以降に10トン未満、2008年以降は10トン以上を見込んでおります。設備面では一期工事として30から50トン/年の設備導入となる3億円程度の追加投資を行います。将来的には大幅な需要増を見込んでいることから、二期工事として年間生産量500トンのプラントの建設を計画しています。
以上