J.D.パワー、「2007年米国自動車初期品質調査(IQS)」結果を発表
米国における自動車初期品質調査、
セグメント別ランキングでフォードグループが躍進
2007年 米国自動車初期品質調査(IQS)
CS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関である株式会社J.D.パワーアジア・パシフィック(本社:東京都港区、代表取締役社長:蓮見南海男、略称:J.D.パワー)は、2007年米国自動車初期品質調査(Initial Quality Study、略称IQS)の結果を発表した。
当調査は、乗用車およびライト・トラックを新車で購入もしくはリース契約したユーザーを対象に、購入後90日間における車両の初期品質を調べるものである。「製造不具合」(注1)と「設計不具合」(注2)の2つのカテゴリーにおける合計228の不具合指摘項目について実際に経験したものをユーザーに指摘してもらい、100台当たりの不具合指摘件数として算出する。単位はPP100(Problems per 100 Vehicles)で、数値が小さいほど不具合指摘が少なく、品質が良いことを示す。
21回目となる今年の調査は2006年11月から2007年1月の間に2007年型車を購入もしくはリース契約した人を対象とし、97,000人以上から回答を得た。
調査結果からブランド別、セグメント別、工場別の3種類のランキングを発表している。当調査は自動車業界において、ユーザーの声に基づく新車の初期品質データとして活用されている。
注1: 「壊れる」や「動かない」など、主に製造に起因するもの
注2: ユーザーの期待を設計仕様が満たさないため、「使い勝手が悪い」等、主に設計に起因するもの
◆新型車・フルモデルチェンジ車の初期品質向上がメーカーの課題◆
今回の調査では、米国自動車業界全体において初期品質の改善がこの20年間続いており、年平均の改善率は6%であることが明らかになった。その結果、20年前と比較すると120%以上改善していることとなる。また不具合指摘を7~8年で50%削減してきていることがわかった。
さらに、メーカーが新しい先端技術を開発し新型車やフルモデルチェンジ車に搭載することに伴い、新型車・フルモデルチェンジ車の初期品質向上がメーカーの課題となっていることが明らかになった。フルモデルチェンジ車ではモデルチェンジ前に比べて100台当たりの不具合指摘件数が10件(10 PP100)多くなる傾向が見られた。
これについて当調査の責任者であるJ.D.パワー・アンド・アソシエイツ(J.D. パワーアジア・パシフィックの米国本社)のディレクター、ニール・オッデスは「新モデル投入時に高い初期品質の実現を目指すことがメーカーにとって望ましい。初期品質は将来の確固たる基盤となり、また他社との差異化の要因ともなりうる。新モデルの初期品質は、市場投入の1年後には平均7 PP100の改善が見られる。新モデルの初期品質が低レベルに留まると、その後の改善で遅れを取ることになりかねない」と述べている。
セグメント別ランキングおよびブランド別ランキング
今年のセグメント別ランキングでは、フォードグループが他のグループに比べて最も多い5セグメントでトップに立った。トップのモデルは、フォード・マスタング、リンカーン・マークLT、リンカーンMKZ、マツダ・MX-5・ミアータ、マーキュリー・ミランである。またトップ3には14モデルが入った。さらにブランド別ランキングでもリンカーンが昨年の12位から3位へ躍進した。「今回の調査結果はフォードグループにとって朗報と言えるだろう。これはフォードグループの車および工場の品質が向上している証と言える」(オッデス)
また、メルセデス・ベンツとトヨタが各々3セグメントで第1位となった。トップにランクされたトヨタ車は4ランナー、セコイア、タコマである。メルセデス・ベンツ車はEクラス、SLクラス、Sクラスだった。Sクラスはアウディ・A8と同率1位で、両モデルは72 PP100と全モデル中、最も不具合指摘件数が少なかった。
オッデスは「メルセデス・ベンツは昨年に比べて大きく改善している。特にフルモデルチェンジしたSクラスは63 PP100の改善だった。メルセデス・ベンツはブランド別ランキングでもランクを20位上げ、ランキング対象ブランドの中で順位の上昇が最も大きかった。モデル別に見ても、調査対象となった全てのモデルで大幅に改善している。今回の改善の幅とスピードはメルセデス・ベンツが品質に対し真剣に取り組んでいることの表れだろう」と述べている。
ブランド別ランキングでは、ポルシェが91 PP100で2年連続第1位となった。続いて第2位はレクサス、第3位はリンカーン、第4位はホンダ、第5位はメルセデス・ベンツだった。
ノンプレミアム・ブランドの中で不具合指摘件数が最も少なかったのはホンダで、昨年の6位から順位を上げた。セグメント別ランキングでもシビックとCR-Vがトップになっている。ノンプレミアム・ブランドでは他に、起亜が昨年の24位から今年は12位と大幅に順位を上げた。セグメント別ランキングでもリオ/リオ・シンコが2年連続1位となった。
当調査の対象ブランドで昨年と比較してスコアが大幅に改善したのはランドローバー(昨年比マイナス34 PP100)、サーブ(同30 PP100)、メルセデス・ベンツ(同28 PP100)だった。セグメント別ランキングで前述の他にトップとなったモデルは、シボレー・エクスプレス、同シルベラード・クラシックHD、レクサス・RX350/RX400h、ポンティアック・グランプリ、ポルシェ・ボクスターだった。
プラントアワード(工場賞) - 「製造不具合」のみが対象
当調査では米国市場向けに生産している工場を対象に「製造不具合」の指摘が少ない工場に対して地域別にプラントアワード(工場賞)を授与している。
全地域の中で「製造不具合」の指摘が最も少ない工場に授与されるプラチナ賞は、今年はリンカーン・タウンカーを生産しているフォードのウィクサム工場(米国・ミシガン州)が得た。製造不具合の指摘件数は35 PP100だった。在北米の工場がプラチナ賞を受賞するのは1999年以来である。
北米/南米地域では他に、シルバー賞はビュイック・ラクロスとポンティアック・グランプリを生産しているゼネラルモーターズのオシャワ第2工場(カナダ・オンタリオ州)が、ブロンズ賞はホンダ・シビック・セダン、ホンダ・エレメントを生産しているホンダのイーストリバティー工場(米国・オハイオ州)が受賞した。
アジア太平洋地域では、ゴールド賞はレクサス・ES350、レクサス・IS250/IS350、レクサス・RX350、レクサス・RX400h、トヨタ・ハイランダー/ハイランダー・ハイブリッドを生産しているトヨタの九州工場(トヨタ自動車九州)、シルバー賞はトヨタ・プリウスを生産しているトヨタの富士松工場(トヨタ車体富士松工場)が受賞した。
またブロンズ賞はホンダの埼玉製作所と鈴鹿製作所が同率で受賞した。埼玉製作所はアキュラRL、アキュラTSX、ホンダ・アコード・セダン/ハイブリッド・セダン、ホンダ・CRVを、鈴鹿製作所ではホンダ・シビック・セダン/ハイブリッド・セダン、フィット、S2000を生産している。
欧州地域では、BMW・3シリーズ・クーペ、3シリーズ・セダンを生産しているBMWのレーゲンスブルク工場(ドイツ)がゴールド賞を受賞した。シルバー賞を受賞したのはメルセデス・ベンツ・Cクラス、CLクラス、CLSクラス、Eクラス・セダン、Eクラス・ワゴン、Sクラスを生産しているメルセデス・ベンツのジンデルフィンゲン工場(ドイツ)だった。アウディ・A6・アバント、A6・セダン、A8・セダン、RS4・セダン、S6・セダン、S8・セダンを生産しているアウディのネッカースウルム工場(ドイツ)がブロンズ賞を受賞した。
調査結果の詳細は、J.D. パワー・コンシューマーセンターに掲載している(英語のみ)。 www.jdpower.com
<株式会社J.D.パワーアジア・パシフィックについて>
当社は米国J.D.パワー・アンド・アソシエイツの日本を含むアジア地域でのビジネスの拠点として1990年に設立された。自動車業界を始めコンピューター、通信関連、OA 機器、サービス産業、金融など様々な業界において顧客満足に関する調査やコンサルティングを実施している。ISO9001およびプライバシーマーク取得。会社概要や提供サービスなどの詳細は当社ウェブサイト www.jdpower.co.jp まで。
<J.D.パワー・アンド・アソシエイツについて>
ザ・マグロウヒル・カンパニーズの一部門であるJ.D.パワー・アンド・アソシエイツ(本社:米国カリフォルニア州ウェストレイク・ビレッジ)は、マーケティング・リサーチ、生産・販売予測、コンサルティング、教育・トレーニングおよび顧客満足度調査を実施している国際的な情報サービス企業である。数百万人の消費者からの回答をもとに品質や顧客満足度に関する調査を毎年行なっている。ISO9001取得。
<ザ・マグロウヒル・カンパニーズについて>
1888年に設立されたザ・マグロウヒル・カンパニーズ(NYSE: MHP)は、スタンダード&プアーズ、マグロウヒル・エデュケーション、ビジネスウィーク、J.D. パワー・アンド・アソシエイツなどを通じて金融サービス、教育、ビジネスに関する情報を提供している国際的な情報サービス企業である。世界40カ国に280カ所以上の拠点を有し、2006年の売上高は63億ドルにのぼる。詳細はウェブサイト www.mcgraw-hill.com まで。