野村総研、地域の金融サービスに関する意識調査をインターネットで実施
「2010年、日本の未来を提案します。」
地域事業者を対象に地域の金融サービスに関する意識調査を実施
~地域金融機関は地域密着のサービスを核に提携やIT活用を~
株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、社長:藤沼彰久、以下「NRI」)は、地方の中小企業経営者および自営業者(以下、両者をあわせて「地域事業者」)1,000人に対して、地域の金融サービスに関する意識調査をインターネットで実施しました。
その結果、今後期待する金融サービス提供者として、メガバンクを挙げた地域事業者が10%だったのに対し、64%が地方銀行、40%が信用金庫を挙げており、地域金融機関を重視する地域事業者が多数を占めていることがわかりました。また、今後商圏を拡大したいと考えている事業者(以下、「拡大志向の事業者」)は、電子商取引運営会社に対する期待が高いという特徴も見られました(図1)。
NRIでは、地域金融機関と地域事業者の提携が、2010年以降の地域経済の活性化につながると考えています。地域金融機関の金融サービスに対するニーズを積極的に掘り起こし、地域独自の特色あるサービスを開発する必要があります。さらには、全国展開する金融サービス提供者や異業種との連携、ITの活用による効率化等も視野に入れていくべきでしょう。
本調査では、拡大志向の事業者の24%が、自社の課題として「前向きな資金調達をしたいが難しい」ことを挙げています。この背景のひとつとしては、銀行などの金融機関が、顧客企業の不動産担保や、財務評価に基づく内部格付けによって融資判断をしていることがあると考えられます。
NRIは、事業から生み出されるキャッシュフローを担保とするABL(Asset Based Lending;動産・債権を担保とする融資)の活用などが、地域事業者を支える重要なインフラになると考えています。地域事業者の事業を見極めて融資資金の枠を設定するためには、地域事業者と金融機関が提携して、地域の商流を把握することが有効です。これが、他の全国展開する金融サービス提供者に対する差別化にもつながります。
また、今後期待する金融機能・サービスを聞いたところ、拡大志向の事業者の「電子商取引上での決済サービス」や「電子商取引上での売掛金を活用した資金調達」に対する期待は、突出して高いという結果が出ました(図2)。2007年度に施行が予定されている電子債権法に対応して、地域内の企業間信用を熟知している地域金融機関が、地域事業者の代理人として、地域外の事業者に対して、地域事業者の電子債権上での債務に保証を行ったり、あるいは電子債権の取引の仲介をしたりすることも可能でしょう。
2010年代に向け、規制緩和・政府機関の民営化やITの浸透を背景として、スーパーやコンビニ、郵便局といったさまざまなチャネルを通じた金融サービスの提供が急速に進むと考えられます。そして、生活に密着したサービスを利用者が選択できるようになると予想されます。NRIでは、地域金融機関と全国展開型の金融サービス提供者とのすみ分けは、対人的なサービス提供と、IT等を活用した効率的なサービス提供という二つの方法を、どのような配分で組み合わせるのか、という点に集約されてくると考えています。
今回の調査結果を含む、2010年代の金融サービスのあり方に関するNRIの提言を、単行本「2010年の金融」にまとめ、9月14日に東洋経済新報社から発行する予定です。NRIでは、今後も、日本の金融サービスの方向性を探っていきます。
野村総合研究所(NRI)では、2010年、さらにはその先の日本の社会・産業のあり方についてシリーズで提言していく、「2010年、日本の未来を提案します。」キャンペーンを、2005年9月から実施しています。このニュースリリースも本 キャンペーンの一環として発表したものです。NRIの提案がきっかけとなり、日本の産業界や社会で、未来に向けた夢のある目標づくりが展開されるよう、今後も、ニュースリリース、単行本出版、セミナー開催などを通じて積極的な提案活動を推進していく予定です。