東洋紡、理化学研究所と共同で官能基に依存しない効率的な低分子マイクロアレイを開発
官能基に依存しない効率的な低分子マイクロアレイを開発
~当社システムとの組み合わせで、たんぱく質と結合する新薬を簡単に選択~
東洋紡(大阪市、社長:坂元龍三)は、理化学研究所(和光市、理事長:野依良治)の中央研究所長田主任研究員との共同で、低分子マイクロアレイ「MultiSPRinter(R)用フォトリンカーチップ」を開発し、今年8月より販売を開始しました。本製品は、低分子化合物の官能基に依存せずに、どのような化合物でも固定化できるため、従来よりも簡便かつ大幅に短縮した時間で低分子マイクロアレイの作製が可能になります。
記
1.「MultiSPRinter(R)用フォトリンカーチップ」の特長
今回開発した「MultiSPRinter(R)用フォトリンカーチップ」には、金のコーティングをしたチップに光反応性グループがあらかじめ導入されています。このチップ上に新薬候補の微小溶液を滴下し、光を当てることにより、最大96点の低分子マイクロアレイを作製することができます。
この方法としての特長は、以下のとおりです。
(1)光反応を利用しているため、新薬の候補物質にある官能基の種類によらず固定化できます。
(2)光反応を利用して、ランダムな方向に固定化できるため、従来の方法である固定化方向を考慮した形で低分子を合成する必要がなくなり、アレイを作製する手間が大幅に省けます。
(3)従来の方法では、低分子を一定の方向しか固定できなかったため、新薬の候補物質とターゲット分子との結合をシステム上で見落とす可能性が高かったのに対し、この方法ではランダムな方向に固定できるため、見落としの可能性が減少します。
2.当社の解析システムとの組み合わせによる新薬のスクリーニング
この「フォトリンカーチップ」と当社の低分子マイクロアレイ解析用『表面プラズモン共鳴(SPR※)イメージングシステム「MultiSPRinter(R)」』を組み合わせて使用すれば、新薬の候補物質とターゲットとなるたんぱく質との結合を、従来の方法よりも大幅に短縮した時間で観察することができます。その結果、たんぱく質と結合する新薬を簡便に選び出すこと(スクリーニング)が可能となります。
SPRは、金薄層上の「屈折率変化」を反射光強度の変化から検出する方法なので、蛍光や放射線同位体を使用することなく、相互作用を解析することができる技術です。
SPRイメージング法は、チップの広い範囲に光を当て、その反射像をCCDカメラで撮影する方法です。金薄層上に複数の物質を固定したマイクロアレイを作製することで、複数の相互作用を同時に解析することができます。
※SPR:Surface Plasmon Resonance
3.今後の事業性について
当社は、低分子マイクロアレイ「MultiSPRinter(R)用フォトリンカーチップ」、および『表面プラズモン共鳴(SPR)イメージングシステム「MultiSPRinter(R)」』を、ドラッグディカバリーに有望な創薬支援技術と位置づけており、今年8月より、製薬企業への販売を開始しました。
今後、両製品で年間5億円の売上げを目指しています。
以上
