農研機構・果樹研究所、渋皮が簡単にむけるニホングリ新品種「ぽろたん」の育成に成功
渋皮が簡単にむける画期的なニホングリ新品種「ぽろたん」
一般にニホングリ品種は、チュウゴクグリ品種と比べ果肉のやわらかさや果実の大きさなどの点で優れるものの、渋皮がむきにくいという欠点があります。果樹研究所では、良食味で渋皮がむきやすいニホングリ品種の育成を目的として交雑選抜を行ってきた結果、渋皮が簡単にむける画期的な品種「ぽろたん」の育成に成功しました。
本品種は、果実が大きく食味に優れるとともに、家庭用のオーブントースターや電子レンジで加熱するだけで簡単に渋皮をむくことができます。
今後、本品種を用いた和洋菓子などの加工品への利用をはじめとした需要拡大により、国内のクリ関連産業の活性化に寄与することが大いに期待されます。
(内容)
[ 育成の背景 ]
ニホングリは、古くから日本の食文化の中で秋の味覚として大きな存在感を持っています。このニホングリは、果実が大きく、果肉が滑らかで、独特の風味を持つなど、多くの優れた性質を持っていますが、中国やヨーロッパで栽培されているクリと比べて渋皮剥皮性が悪いという大きな欠点を持っています。この欠点が、加工時に渋皮をむく煩雑さや果肉の歩留まりの悪さに繋がり、加工コストの上昇を引き起こしています。また、家庭においても調理に手間がかかる点が消費低迷の一因となっています。
渋皮剥皮性の良さと果実の大きさを兼ね備えたクリ品種を育成するため、チュウゴクグリとニホングリの雑種の育成など様々な試みが行われてきましたが、これまで成功した例はありませんでした。また、渋皮を取り除く方法についても様々な方法が開発されましたが、いまだ実用的な方法は開発されていません。
果樹研究所において、近年渋皮剥皮性の簡便な調査法を開発し、育種に応用した結果、果実が大きく渋皮剥皮性の良い画期的なニホングリ品種の育成に成功しました。
[ 品種の来歴 ]
「ぽろたん」は、農研機構果樹研究所において1991年に早生で果実の大きなニホングリ系統である「550-40」と早生の主力品種である「丹沢」を交雑して得た実生から育成・選抜された品種です(旧系統名:クリ筑波36号。平成18年8月)1日に農林水産省において開催された平成18年度農林水産省農作物新品種命名登録・中間母本登録評価検討会(第1回)で「ぽろたん」と命名され、クリ農林8号として登録されることが了承されました。現在、品種登録出願中です(写真1,2。)
[ 品種名の由来 ]
早生の主力品種である「丹沢(たんざわ」の子であり、渋皮がポロンとむける)ことと、広く愛されて欲しいとの願いを込めて「ぽろたん」と命名しました。
[ 新品種の特徴 ]
・焼き栗の渋皮剥皮性が甘栗に使われるチュウゴクグリ並に優れます(表1。)
・果実は30g程度と大きく、果肉色は黄色で果肉質は粉質、甘味、香気はともに多く、果実品質に優れています。収穫期は、育成地で9月上中旬です(表2。)
・破裂しないように鬼皮にナイフ等で果肉まで達する程度の傷を数本付けた後、電子レンジ(700W)で2分間または、オーブントースター(180℃)で15分間加熱することで簡単に渋皮を除去することができます(写真3。)
・渋皮剥皮後は、そのままクリご飯や菓子などの調理に利用できます。
[ 用語説明 ]
渋皮剥皮性:渋皮(クリ果実の外皮(鬼皮)と果肉の間にある薄皮)のむけやすさ。
交雑:遺伝的に異なる2個体間の受粉を意味する。交雑の結果として雑種ができる。
(※ 添付資料あり。)