トーマツコンサルティングなど、「労働CSRの人事部門の取組み状況調査」結果を発表
共同調査
労働に関するCSR(企業の社会的責任)についての人事部門の取組み状況調査
「労働CSR」の取り組みは道半ば
ネガティブ・インパクト対応が先行、次世代型のポジティブ・インパクト対応には遅れ
「賃金格差」など新たな課題も発生
トーマツコンサルティング株式会社(本社:東京都千代田区 社長:伊香賀正彦)は、このたび産労総合研究所(本社:東京都千代田区 社長:高橋邦明)と共同で人事部門における労働CSRへの取組み状況と課題を探るため、上場企業および産労総合研究所会員企業を対象に、2006年8月「労働に関するCSR(企業の社会的責任)についての人事部門の取組み状況調査」を実施、167社からの回答を得、このたび調査結果をまとめた。
調査を通じて下記のような実態が主に把握できたが、その内容について、次ページ以下にご紹介する。本リリースでは、調査結果から得られた昨今話題となっているポイントを抜粋しているが、詳細は、産労総合研究所発行「人事実務」2006年10月15日・第1001号で紹介している。
・女性登用は大幅な遅れが目立ち、数値目標を設定しているのは8社に1社程。
・皆無に近い男性による育児休業の取得状況。9割以上では活用されず。
・4分の3近くの企業でメンタルヘルス休職者が存在。
・正社員と同一業務をする非正社員の賃金に格差をもうけていない企業は2割未満。「8割」「6割」程度の賃金がそれぞれ3分の1を占める。
●調査概要
(1)記入方法:項目選択および自由記述方式/ (2)回収方法:アンケート用紙による直接返送方式
(3)実施時期:2006年8月/(4)実施対象:上場企業および産労総合研究所会員企業より3,000社を抽出
(5)回答数:167社/(6)回答企業の内訳:規模5百人未満78社、5百人以上千人未満20社、千人以上
3千人未満36社、3千人以上5千人未満12社、5千人以上21社:業種製造業75社、非製造業92社
● 「労働CSR」への関心の高まりと人事部門の役割の増大
CSR(企業の社会的責任)が注目され、数年が経過したが、当初は、コンプライアンス、コーポレート・ガバナンス、環境経営、社会貢献の領域での対応が先行してきた。しかし、すべてのステークホルダーに対する責任を負うのがCSRだとすれば、雇用者として従業員や労働マーケットに対して負うべき責任、すなわち「労働CSR」もきわめて重要なファクターである。「労働CSR」の領域は、「労働コンプライアンス体制の強化」はもちろんのこと、差別問題、セクシャル・ハラスメント、過労死、サービス残業など従来から関心の高かった課題に加え、メンタルヘルス、請負労働、ワーク・ライフ・バランスといった昨今話題となっている課題、さらには、エンプロイアビリティなど人的資本への投資といった人材マネジメント上の課題にまで広がっている。こうした課題を鑑みると、経営環境において「労働CSR」もまたこれまで注目を浴びてきたCSRのテーマと同等に重要度の高い領域であることを改めて認識せざるを得ない。次々と発生する「労働CSR」の新しい課題が、労働者のさまざまな層から関心を呼んでいることに注意を払わなくてはならない。
また、CSRに取組む大企業ではCSRのための専門部署を設けているケースもめずらしくないが、多くの企業では、広報部門や総務部門がCSRを担当しているものと思われる。しかし、これらの部門と「労働CSR」との関係は希薄である。人事部門が従来から担当してきた課題をはじめ、さらに新しいテーマについても、「CSR」という観点から人事部門の関与は避けては通れない。
これらのことから、本調査では、新しいテーマも含んだ「労働CSR」に対して、とくに人事部門がどのように取組んでいるのかを調査したものである。数あるCSRに関する調査とは異なり、「労働CSR」に絞って調査を試みたという点でも貴重な調査となっている。調査結果からは、日本企業における労働CSRへの取組みの実態をうかがうことができる。