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ニュースリリースのリリースコンテナ第一倉庫

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2024'11.28.Thu
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2007'04.13.Fri

富士通と富士通研究所、世界最高耐圧のミリ波帯向け窒化ガリウムHEMTを開発

ミリ波帯向け、世界最高耐圧の窒化ガリウムHEMTの開発に成功


 富士通株式会社と株式会社富士通研究所(注1)は、今後利用拡大が予想されるミリ波帯(注2)の送信用増幅器に適した窒化ガリウム(注3)高電子移動度トランジスタ(HEMT)(注4)において、実用レベルの耐圧を得ること(190ボルトの電圧をかけても壊れないことを検証)に成功しました。これは、ミリ波帯向けトランジスタとしては世界最高耐圧であり、今後高信頼で高速の屋内外の無線通信に貢献します。

 今回開発した技術は、ミリ波帯の高速性・直進性を活かした高速無線通信における、送信用増幅器の大幅な高出力化・小型化・低コスト化に貢献します。
 本技術の詳細は、10月23日から京都で開催される国際会議IWN(International Workshop on Nitrides)で発表します。なお、本研究は総務省委託研究「電波資源拡大のための研究開発」の一環として実施したものです。


【 開発の背景 】
 ユビキタス社会において、離島や船舶、基地局間の無線通信システムや、情報家電分野における超高精細映像(HDTV)伝送、自動車用車間距離レーダーを利用したITS(注5)などの用途において、毎秒ギガビットクラスの高速無線通信の用途が拡大しています。
 ミリ波帯は高速性・直進性といった特徴だけでなく、まだ未使用の広い周波数帯域があるため、今後このような高速通信を支える帯域として期待されてきています。しかし、従来の無線通信よりも高い周波数のため、高性能で低コストのトランジスタの実用化は困難で、まだミリ波帯は一般に広く利用されていません。
 両社は、これまで携帯電話基地局向けに窒化ガリウムHEMTを用いた高性能の送信用増幅器の開発を行ってきました。この技術を、周波数の高いミリ波帯に適用するにはさらなる高速性の向上と高信頼性が求められます。

【 課題 】
 実用的なトランジスタの開発にあたっては、高信頼性、つまりゲート・ドレイン間でどのくらい高い電圧に耐えられるか(高耐圧)の性能が重要です。しかし、従来のミリ波帯向けのトランジスタにおいては、高速ではあっても、実用レベルの高耐圧を満たすものはありませんでした。高耐圧に向けては、ゲート電極からの漏れ電流を減らすことが必要となります。
 また従来のゲート電極の形状はT型で(図1(a))、機械的な強度も弱くゲート抵抗も高いため、動作する最大周波数が低く、実用的な電力増幅率が得られないという問題点がありました。

【 開発した技術 】
 今回、窒化ガリウムHEMTの結晶構造とゲート形状を改良することにより上記課題を解決しました(図1(b))。表面に薄いn型窒化ガリウム層を形成した構造とすることで、ゲートからの漏れ電流を減らしました。また、ゲート電極をY型にすることで、ゲートの強度を強くかつゲート抵抗を低くし、動作周波数が高くなりました。

 図1:(a)従来の窒化ガリウムHEMT構造 
    (b)今回開発した構造 
 (※ 関連資料を参照してください。)

【 効果 】
 今回開発した技術により、最大動作周波数が180ギガヘルツ(GHz)で耐圧が190ボルト(V)の、高速で高耐圧のトランジスタを実現することができました(図2)。ミリ波帯向け窒化ガリウムトランジスタは従来50から100Vの耐圧しかありませんでしたが、今回世界で初めて実用レベルの耐圧を得ることができました。

 図2:今回開発した窒化ガリウムHEMTの耐圧と最大動作周波数 
 (※ 関連資料を参照してください。)

【 今後 】
 今回開発したミリ波帯向け高耐圧窒化ガリウムトランジスタ技術を、2010年ごろの実用化を目標に、大容量無線通信システムや情報家電伝送システムへ適用すべく、デバイス開発を進めていきます。


以上

[注釈]
注1 株式会社富士通研究所:社長 村野和雄、本社 神奈川県川崎市。

注2 ミリ波帯:30GHz以上300GHz以下の周波数帯。10GHz以下の周波数帯に比べまだ利用率が低い。 

注3 窒化ガリウム:ワイドバンドギャップ半導体の一つで、シリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)など従来の半導体材料に比べ、電圧による破壊に強いという特長がある。 

注4 高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor):1979年に富士通研究所の三村高志氏(現、富士通研究所フェロー)が発明した、高速・低雑音性にすぐれた化合物半導体によるトランジスタ。現在、衛星放送用受信機や携帯電話機、GPSを利用したナビゲーションシステム、広帯域無線アクセスシステムなど、IT社会を支える基盤技術として広く使用されている。 

注5 ITS(Intelligent Transport System):最先端の情報通信技術を用いて人と道路と車両とをネットワークで通信させる交通システム 
 

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