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2007'04.17.Tue

中部電力、浜岡原発の低圧タービン羽根損傷の原因と対策について発表

浜岡原子力発電所5号機 低圧タービン羽根損傷の原因と対策について


 浜岡原子力発電所5号機(改良型沸騰水型、定格電気出力138万キロワット)で発生した低圧タービン第12段羽根損傷事象について、これまで原因の調査および対策の検討を実施してまいりましたが、その結果をとりまとめましたので、お知らせいたします。なお、この結果については、本日、国に報告しました。


1 調査結果について
 低圧タービンを点検した結果、低圧タービン(B)の第12段羽根の脱落(1本)を確認するとともに、低圧タービン(A)~(C)のいずれも第12段羽根の根元取付け部(以下、「フォーク部」という。)および車軸の羽根取付け部の一部にひび割れを確認しました。他の段の羽根については、異状は認められませんでした。 
 損傷した羽根のフォーク部等の破面観察を行った結果、高サイクル疲労(※1)特有の模様を確認しました。 
 このことから、今回の事象は5号機低圧タービン第12段羽根特有の事象と推定しました。 
 高サイクル疲労を発生させた要因は、無負荷および低負荷運転時にタービン内の蒸気流の乱れによって発生するランダム振動(※2)による応力や、負荷しゃ断試験時等にタービンに給水加熱器内の蒸気が急速に逆流して起こるフラッシュバック現象(※3)の振動(以下、「フラッシュバック振動」という。)による応力が第12段羽根に作用し、フォーク部が疲労破損した可能性があると推定しました。
(平成18年9月12日 公表済み)

2 原因について
 ランダム振動およびフラッシュバック振動の応力評価などの結果から、第12段羽根フォーク部の初期のひび割れは、5号機の試運転中に実施した20%負荷しゃ断試験時にランダム振動およびフラッシュバック振動が同時に発生し、それぞれに起因した応力が重なり合って繰り返し作用したことにより、高サイクル疲労によって発生したと推定しています。 
 その後、ひび割れは、試運転や営業運転中に、ランダム振動またはフラッシュバック振動による応力によって進展しました。脱落した羽根(1本)についてはフォーク部の残存面積がひび割れの進展により減少し、回転に伴う遠心力に耐えきれず破断に至ったものと推定しました。

3 対策について
 今回の事象を踏まえ、低圧タービン(A)~(C)のすべての第12段羽根(合計840本)をランダム振動およびフラッシュバック振動を考慮して設計・製作したものに取り替えます。なお、車軸の羽根取付け部にひび割れがあることから、これについても新たに製作します。 
 羽根の新規設計・製作には検証試験等を含め相当な期間が見込まれます。 
 したがって、新しい羽根に取り替えるまでの間、対象となる第12段羽根を取り外し、代わりに、原子力発電所および火力発電所で使用実績がある「圧力プレート(※4)」を設置して運転を行います。 
 今回の圧力プレート設置に関しては、設備等への影響を評価し、安全・安定に運転できることを確認しております。今後、国の設計審査や使用前検査を受けてまいります。なお、運転再開時期については、現時点では未定です。

 また、タービン大型化に伴う羽根の設計にあたって、メーカによる検証が十分でない面があったことから、タービン設計管理面についても改善を図っていきます。


※1「高サイクル疲労」 
 金属材料に一定以上の力が1万~10万回以上繰り返し加わることにより、ひび割れが発生・進展し損傷に至る現象です。

※2「ランダム振動」 
 タービン内の蒸気流の乱れ(大きな逆流や渦流)によって羽根に発生する不規則な振動で、タービンの無負荷時および低負荷時に発生する現象です。

※3「フラッシュバック現象」 
 低圧タービンでは、その蒸気の一部を取り出して、原子炉へ供給する水を加熱しております。この加熱用の蒸気を抽気といいます。発電機の負荷しゃ断やタービンの自動停止が発生すると、タービンに供給される蒸気が急激に減少するため、真空状態の復水器と連結しているタービン内部の圧力が低下し、抽気がタービンに高速で逆流します。これをフラッシュバック現象といいます。なお、負荷しゃ断とは、送電線の故障等により発電を緊急停止することです。

※4「圧力プレート」 
 タービンの羽根には動翼と静翼があります。回転する動翼と動翼の間に、蒸気の流れを整えるための回転しない静翼を設置しています。第11段の動翼を通過した蒸気は静翼を通り流れが整えられ、第12段の動翼を回転させ、次の静翼でまた流れが整えられて、第13段の動翼に向かいます。 
 圧力プレートは、第12段の動翼とその手前の静翼を取り外し、静翼の代わりに設置する蒸気の流れを整えるための回転しないプレートです。この圧力プレートは取り外した羽根と同程度に圧力を降下させるとともに蒸気の流れを整える役割を果たすもので、他の羽根に影響のないことを確認しています。


添付資料1:浜岡原子力発電所5号機 低圧タービン第12段羽根損傷の原因と対策について
添付資料2:圧力プレートを設置した運転の概要
 (※ 関連資料を参照してください。)


以上


( これまでお知らせした内容 )

 浜岡原子力発電所5号機(改良型沸騰水型、定格電気出力138万キロワット)は、定格熱出力一定運転中のところ、平成18年6月15日午前8時39分、「タービン振動過大」の警報が発報し、タービンが停止するとともに、原子炉が自動停止しました。
 (平成18年6月15日 公表済み)

 その後、6月19日より低圧タービンの車室の開放作業を行い、低圧タービン(B)の第12段(外側から3段目)の羽根のうち1本が車軸から脱落し、タービン下部に落下していること、フォークが折損し、羽根と車軸とを固定するためのピンも一部切断していることを確認しました。羽根が脱落した段について残りすべての羽根(139本)を取り外して目視で確認したところ、46本について、フォークの一部に折損またはひび割れを確認しました。 
 また、その周囲の羽根や部材の一部にも、擦り傷やへこみがあることを確認しました。
 (平成18年6月23日および6月30日 公表済み)

 羽根の脱落が確認された低圧タービン(B)とともに、他の2基のタービン(A)(C)について、目視点検および非破壊検査を実施した結果、低圧タービン(A)では185本、低圧タービン(B)では247本、低圧タービン(C)では230本にフォークの一部に折損またはひび割れを確認しました。 
 また、タービン(B)の羽根が脱落した側の第13段、第14段の羽根車については、異状は認められませんでした。
 (平成18年7月6日および7月11日 公表済み)

 低圧タービン(B)の損傷に伴い、破損した物品について、タービン内部における回収作業は、ほぼ終了していますが、タービン以外へ流出したと考えられる物品について、8月24日より、回収作業を開始しました。作業は10月まで実施する予定です。
 (平成18年8月23日 公表済み)

 低圧タービン(B)で発生した羽根損傷を踏まえ、8月30日より9月21日まで、高圧タービンの開放点検を実施しました。今回の点検では、高圧タービン第1~7段のすべての段について、羽根を抜き取らない状態で目視点検や非破壊検査を実施し、異状のないことを確認しました。
 (平成18年8月30日および9月22日 公表済み)

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