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ニュースリリースのリリースコンテナ第一倉庫

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2024'11.25.Mon
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2007'04.02.Mon

産総研、超小型・高出力密度のマイクロ燃料電池を開発

■超小型・高出力密度のマイクロ燃料電池の開発

-2Wを超える出力性能を角砂糖大(1cm3)の大きさにて600℃以下で実現-


●ポイント

・微細なセラミックス管を用い角砂糖大に集積した小型高出力密度の固体酸化物型燃料電池(SOFC)集積体(キューブ)の開発。
・高温動作燃料電池であるSOFCの常識を覆す600℃以下の動作温度で1cm3当たり2W以上という世界最高レベルの小型高出力性能を実現。
・マイクロ燃料電池のスタック化が容易になり数10Wクラス(数10cm3)から、数kWクラス(数1000cm3)までのモジュールシステムへの展開が可能に。


【 概要 】

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川弘之】(以下「産総研」という)先進製造プロセス研究部門【部門長 三留秀人】機能モジュール化研究グループ【グループ長 淡野正信】の鈴木俊男 研究員およびファインセラミックス技術研究組合(以下「FCRA」という)・日本特殊陶業株式会社【代表取締役社長 加藤 倫朗】(以下「日本特殊陶業」という)の舟橋佳宏 研究員は、角砂糖大の超小型の固体酸化物型燃料電池(SOFC)集積体(キューブ)の開発に成功した。

 開発した超小型SOFC集積体は、小型コジェネレーション用として開発に取り組む東邦ガス株式会社(以下「東邦ガス」という)によって、その性能が評価され、600℃以下の動作温度でも高出力密度の発電が可能である事が確認された。

 SOFCは800~1000℃の高温動作温度が必要で適用分野が限られており、低温で利用可能で且つ出力密度が大きなSOFCモジュールの実現が望まれていた。今回、産総研とFCRA・日本特殊陶業は角砂糖大サイズの高度集積マイクロSOFCキューブを開発し(写真1)、東邦ガスがこのマイクロSOFCキューブの発電試験を行い、600℃以下でも1cm3当たり2W以上という世界最高の出力性能を確認した。

 今回の成果により、自動車用補助電源、小型コジェネ、あるいはポータブル電源などへマイクロSOFCシステムの適用可能性が現実的なものになった。

 なお、今回の研究成果は、4月4~6日に東京ビッグサイトで開催の、国際セラミックス総合展にて発表予定である。
 
写真1 1cm角キューブ : 2mm径チューブ   0.8mm径チューブ
 ※ 関連資料参照


【 研究の背景 】

 燃料電池は小型でも高い効率を実現できるので地球温暖化の原因の1つと言われるCO2の発生を大幅に削減できるため、種々の方式が開発されている。その中で最も効率が高い燃料電池はセラミックス技術を利用するSOFC(固体酸化物型燃料電池)である。SOFCは我が国が得意とする技術を利用でき、他の燃料電池に比べて高い温度領域で動作するので熱機関の排熱を燃料改質や貯湯に利用でき、熱機関全体の効率を大幅に向上できる。さらにSOFCは燃料電池の構成要素を全てセラミック材料だけで実現できるので、他の燃料電池に比べ長期安定性が高い特徴がある。しかし、これまでのSOFCは800~1000℃と高温動作が必要であり熱サイクルや負荷変動の少ない発電設備への応用などに限られていた。そこでSOFCを家庭用分散電源、移動電子機器用電源、自動車等の補助電源等に応用できるように、650℃以下で動作が可能で、しかも急速運転が可能なSOFCの実現が望まれていた。


【 研究の経緯 】

 上記の社会的背景を受けて、産総研、FCRA・日本特殊陶業、東邦ガスは、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」という)プロジェクト「セラミックリアクター開発」(平成17~21年度)の一環として、動作温度が650℃以下、高出力で急速運転が可能なSOFCを実用化させる研究を行ってきた。これまでに産総研では、急速運転を可能にできるSOFCとして、ミリ~サブミリオーダー径の高性能チューブ型マイクロSOFCの開発に成功している。

 一方、チューブ型マイクロSOFCの実用化のためには、これらのセルを高度集積し、スタック・モジュール化する必要がある。そのために高い空気供給機能(多孔質体)と集電機能(低電気抵抗)の両機能を満たす集積用構造体の開発が必要である。通常、導電性セラミックスは多孔化すると電気抵抗が増加するため相反する機能を両立させた構造体の作製は難しい。

 産総研とFCRA・日本特殊陶業は、市販のセラミック材料を利用しながらもセラミック電極構造制御技術やマイクロ集積モジュール作製に必要なセル接合技術等のセラミック製造技術を検討し、その集積方法および集積用構造体の製造方法を新規に見いだすことで、上記の問題を解決した。

 本研究は、産総研とFCRA・日本特殊陶業が、NEDOのプロジェクト「セラミックリアクター開発」における革新的セラミック製の電気化学リアクターの開発を進めたものである。


【 研究の内容 】

 今回の成果は、SOFCの空気側電極材料としても使われているランタンコバルト系セラミックスを集積用構造体に用い、その微構造制御を最適化したことにより成功した。

 この成功により、600℃以下の低温動作でも1cm3当たり2W以上の出力を有する超小型キューブ式SOFCユニット技術が確立できたといえる。また、この技術は基本的なセラミック成型方法を利用しているので量産化にも適している。

 実際に作製したマイクロSOFCキューブは角砂糖大の1cm3の体積を有し、直径が0.8~2mmのチューブ型マイクロSOFCが内部に集積されている構造である。東邦ガスは550℃の運転温度において2 mm径のチューブ型マイクロSOFCキューブに水素を流して性能試験を行った。その結果、2W以上の電力が得られることが実証された(写真2参照)。図1は実験データを示したもので、550℃の運転温度で、電流4.5Aの時、僅か1 cm3の体積から2Wを超える出力を発電できることが分かる。

 この結果は600℃以下での運転における単位体積当たりの燃料電池特性として世界最高レベルであるとともに、このユニットが燃料・空気の通路を有した本格的な世界最小のマイクロチューブSOFCキューブであることになる。

 本開発のマイクロSOFCキューブの実現によってマイクロSOFCのスタック化が容易になり、小型移動機器用電源の数10Wクラス(体積寸法:数10cm3)から、自動車用補助電源、家庭用電源へ適用可能な数kWクラス(体積寸法:数1000cm3)までのスタック、モジュールへの展開が可能となり、SOFCを家庭用の分散電源や移動電子機器用電源、自動車補助電源等への応用を加速するものと考えられる。

写真2 今回開発した角砂糖大のマイクロSOFCキューブの外形および実証試験風景
 ※ 関連資料参照

図1 550℃におけるキューブ実証試験結果(1cm角キューブ)
 ※ 関連資料参照


【 今後の予定 】

 今後はさらなるキューブの性能向上を目指すとともに、得られたキューブの集積化によるスタック作製に関する要素技術、各チューブへの燃料ガス供給や電力回収を行う接続部分(インターフェース)の精密作製技術を確立し、最終的には、耐衝撃性、急速運転に対応した小型高効率のスタック・モジュールの製造技術開発を進めていく (図2参照)。
 
図2 当研究にて開発中のセルスタックモジュール例(3キューブスタック)の概要
 ※ 関連資料参照


【 用語の説明 】

◆固体酸化物型燃料電池 (SOFC)
 燃料電池は、水の電気分解の逆反応で、水素と酸素の化学反応から直接発電することができる高効率でクリーンな発電方法として、いくつかの方式について開発が進められている。なかでもSOFCは酸化物を用いた燃料電池であり、600-1000℃において運転を行うことから、高効率、高耐久性であり、さらに排熱を利用することで総合効率が高くなるため、実用化が期待されている。

◆コジェネレーション
 あるエネルギー源の排熱を利用して動力・温熱・冷熱を取り出し、総合エネルギー効率を高める手法のこと。場合によっては、系統電源と分散電源を組み合わせたシステムを意味することもある。

◆セラミックリアクター
 物質・エネルギー変換が可能な機能性セラミック材料を利用する化学反応制御システム。例えば、イットリアを固溶したジルコニア(ZrO2)セラミックス(YSZ)等の酸素イオン伝導性材料では結晶中を酸素イオンが拡散して移動する性質を利用し、センサー、燃料電池発電およびガス浄化等へ利用可能。

◆スタックおよびモジュール
 スタックとは燃料電池(セル)の集合体であり、通常、燃料と空気の分離のための仕切り版(セパレータ)などで単セル同士が接続され、ガス通路などを確保されつつ集積されたものを指す。チューブ型セルを用いる場合、そのセパレータ材料は必要ないという利点がある。モジュールはそのスタックを基本要素として集積化したものを指す

◆家庭用分散電源
 家庭敷地内に設置し、各家庭において独立運転、供給が可能な電源。

◆移動電子機器用電源
 移動、携帯が可能な電子機器(携帯電話、ノートパソコンなど)用の電源

◆自動車補助電源(APU)
 自動車の高性能化に伴い、近年の自動車はより多くの電力を必要としている。その際に必要な電力を供給できる補助的な電源のことである。一般的にはハイブリット車等の発進・加速時などでの利用や、また、トラック等に搭載される高電力消費装置(冷蔵庫など)の運転に補助電源を利用することで、アイドリングによるエネルギーロス、大気汚染物質の排出を最小化することができる。

◆急速運転
 SOFCを利用するには運転温度までSOFCを昇温する必要がある。その際、急速昇温・停止は使用便宜上好ましいが、一方で急速昇温・停止は大きな熱歪みを生じさせ、セラミック構造体の破損に至る場合がある。そのため急速運転はSOFCの大きな技術的課題となっている。

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