タカラバイオ、寒天オリゴ糖に体内の有害物質を解毒する酵素群を増強など研究成果を発表
寒天オリゴ糖は、体内の有害物質を解毒する酵素群を増強し、
体内を綺麗にする作用を示すことを発見
タカラバイオ株式会社(社長:加藤郁之進)バイオ研究所は、寒天を酸分解することで得られるアガロオリゴ糖(寒天オリゴ糖)に、体内の有害物質を体外へ排出するために必要な解毒酵素群の細胞内発現を促進し、解毒作用を高める作用があることを、肝臓由来の培養細胞株を用いた実験で明らかにしました。このような解毒作用は、寒天オリゴ糖以外の他のオリゴ糖では全くみとめられませんでした。これらの成果を、京都市で開催される第61回日本栄養・食糧学会大会で5月19日に発表します。
寒天オリゴ糖は、寒天を酸分解することで得られる少糖です。寒天をレモン果汁などと加熱すると、固まりにくくなることがよく知られていますが、これは寒天の主成分であるアガロース中の3,6-アンハイドロガラクトースとガラクトースの間の化学結合が酸によって切断され、寒天が低分子化されるために起こる現象です。寒天の酸分解によって生成する、ガラクトースと3,6-アンハイドロガラクトースが交互に繋がった2糖~8糖のオリゴ糖を寒天オリゴ糖と呼びます。当社バイオ研究所では、寒天オリゴ糖が酸化作用の強い一酸化窒素の産生を抑制する抗酸化作用や、寒天オリゴ糖を経口投与した動物実験で、関節炎抑制作用や発がん抑制作用などを有することを既に明らかにしています。
今回は、寒天オリゴ糖を肝臓由来の培養細胞株に添加して培養後、解毒酵素であるグルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)、キノンレダクターゼ(QR)の細胞内の活性を測定しました。その結果、寒天オリゴ糖の添加によりGST、UGT、QRの酵素活性が、それぞれ1.8倍、1.4倍、2.4倍に高められることが明らかとなりました。また、それぞれの解毒酵素をつくりだすメッセンジャーRNA(mRNA)の発現量も大きく増加していました。さらに、生体内解毒物質であるグルタチオンの量を測定した結果、寒天オリゴ糖の添加により細胞内グルタチオン量が2.4倍に増加することが確認されました。なお同時に、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳化オリゴ糖などの他のオリゴ糖についても評価しましたが、このような活性は認められませんでした。
当社では、引き続き寒天オリゴ糖の生理活性に関する研究を進めていくとともに、機能性食品素材としての開発を続けていきます。
当資料取り扱い上の注意点
資料中の当社の現在の計画、見通し、戦略、確信などのうち、歴史的事実でないものは、将来の業績に関する見通しであり、これらは現時点において入手可能な情報から得られた当社経営陣の判断に基づくものですが、重大なリスクや不確実性を含んでいる情報から得られた多くの仮定および考えに基づきなされたものであります。実際の業績は、さまざまな要素によりこれら予測とは大きく異なる結果となり得ることをご承知おきください。実際の業績に影響を与える要素には、経済情勢、特に消費動向、為替レートの変動、法律・行政制度の変化、競合会社の価格・製品戦略による圧力、当社の既存製品および新製品の販売力の低下、生産中断、当社の知的所有権に対する侵害、急速な技術革新、重大な訴訟における不利な判決等がありますが、業績に影響を与える要素はこれらに限定されるものではありません。
<参考資料>
■一酸化窒素(NO:Nitric oxide)
一酸化窒素合成酵素の作用により、L-アルギニンと酸素から生成します。血管弛緩作用や神経細胞の情報伝達などの生理活性が知られています。血管新生作用、血管透過性亢進作用、発痛作用、プロスタグランジン合成促進作用を介して各種炎症に関与するため、過剰に産生されると組織の障害が引き起こされます。
■グルタチオン S-トランスフェラーゼ
解毒酵素のひとつで、様々な有害物質に還元型グルタチオンを付加しグルタチオン抱合体を形成させる酵素です。有害物質のグルタチオン抱合体は毒性が低下すると共に、水溶性が増し体外に排出されやすくなります。
■UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ
解毒酵素のひとつで、様々な有害物質にグルクロン酸を付加しグルタチオン抱合体を形成させる酵素です。有害物質のグ ルクロン酸抱合体は毒性が低下すると共に、水溶性が増し体外に排出されやすくなります。
■キノンレダクターゼ
有害なキノン化合物を還元する解毒酵素のひとつです。還元されたキノン化合物はその後、グルタチオン S-トランスフェラーゼやUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼなどによって抱合化され、体外に排出されてゆきます。
■グルタチオン
グルタミン酸・システイン・グリシンの3つのアミノ酸からなる生体内解毒物質です。グルタチオンは解毒酵素のグルタチオン S-トランスフェラーゼの基質として働くほか、単独でも分子内のチオール基を介して活性酸素などを取り去る作用があります。