帝国データバンク、4月の全国企業倒産集計を発表
●2007年4月報
倒産件数は817件、7ヵ月連続の前年同月比増加
負債総額は5912億6800万円、前年同月比40.2%の大幅増加
・倒産件数 817件
前月比 10.8%減
前月 916件
前年同月比 2.8%増
前年同月 795件
・負債総額 5912億6800万円
前月比 25.0%増
前月 4730億7600万円
前年同月比 40.2%増
前年同月 4218億6200万円
【 ポイント 】
倒産件数は817件、集計対象を変更した2005年4月以降で最多となった前月(916件)を99件下回ったが、前年同月(795件)を22件上回り、7ヵ月連続の前年同月比増加となった。
負債総額は5912億6800万円で、前月比は25.0%の増加、前年同月比も40.2%の増加と、それぞれ大幅に上回り、3ヵ月ぶりの前年同月比増加となった。
4月は、元イ・アイ・イーグループのシーコム(株)(旧商号:日新汽船(株)、東京、1097億円)のほか、パチンコ店経営の(株)ダイエー(福島、636億円)などの大型倒産が散発した。
■件 数
倒産件数は817件、集計対象を変更した2005年4月以降で最多となった前月(916件)を99件下回ったが、前年同月(795件)を22件上回り、7ヵ月連続の前年同月比増加となった。
倒産件数の推移は一進一退を繰り返しながら、確実にベースラインが上昇してきており、増加基調が持続している。
主な要因としては、業種別では小売業とサービス業、規模別では負債1億円未満の小規模倒産の増加が、引き続き全体の倒産件数を押し上げる要因となっている。
■負債総額
負債総額は5912億6800万円で、前月比は25.0%の増加、前年同月比も40.2%の増加と、それぞれ大幅に上回り、3ヵ月ぶりの前年同月比増加となった。
負債額トップは、元イ・アイ・イーグループのシーコム(株)(東京)の1097億円。
負債10億円以上の倒産は81件(前月73件、前年同月54件)発生し、負債額上位にはバブル型企業が依然として目立つものの、中堅クラスでは実体のある企業の倒産も散発した。
■業種別
サービス業が2005年4月以降で最多
業種別に見ると、「その他」を除く7業種中、小売業(138件、前年同月比+20.0%)、運輸・通信業(32件、同+6.7%)、サービス業(180件、同+33.3%)、不動産業(31件、同+10.7%)の4業種で、前年同月比増加となった。
なかでも、サービス業(180件)は、集計対象を変更した2005年4月以降で最多となった前月(170件)を10件、前年同月(135件)を45件それぞれ上回るなど、増加ぶりが際立つ。主な内訳では、土木建築サービス(23件)、ホテル・旅館経営(13件)などが高水準となった。
一方、「脱談合」の影響が懸念される建設業は194件(前月241件、前年同月230件)にとどまり、年度末にかけて倒産が増えた前月の反動もあり、前年同月比15.7%の減少となった。
■主因別
「販売不振」が高水準
「不況型倒産」の合計は599件(前月686件、前年同月588件)で、前月比は12.7%(87件)の減少となったが、前年同月比は1.9%(11件)の増加となった。
なかでも、販売不振は554件(前月647件、前年同月533件)で、前月比は14.4%(93件)の減少となったが、前年同月比は3.9%(21件)の増加となり、高水準が続いている。
「不況型倒産」構成比は73.3%(前月74.9%、前年同月74.0%)で、前月を1.6ポイント下回るとともに、前年同月も0.7ポイント下回った。
倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
■規模別
中小・零細企業の倒産が増加傾向
負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産は347件(前月399件、前年同月298件)発生し、前月比は13.0%の減少となったが、前年同月比は16.4%の増加となった。
負債1億円未満の中小・零細企業の倒産は475件(構成比58.1%、前年同月比+9.7%)で、増加傾向にあり、全体の倒産件数を押し上げる要因となっている。
一方、負債10億円以上50億円未満の倒産は64件(前月52件、前年同月47件)、負債100億円以上の倒産は9件(同7件、同5件)それぞれ発生、バブル型企業の大型倒産が依然として目立つ一方で、中堅クラスでは実体のある企業の倒産も散発した。
資本金別に見ると、1億円以上の倒産は31件(前月19件、前年同月22件)発生し、前月比は63.2%の増加、前年同月比も40.9%の増加となり、それぞれ大幅に上回っている。
■態様別
破産は731件、構成比は89.5%
破産は731件(前月794件、前年同月714件)で、前月比は7.9%(63件)の減少となったものの、前年同月比は2.4%(17件)の増加となった。構成比は89.5%で、2ヵ月連続して90%を下回った。
特別清算は33件(前月44件、前年同月33件)で、前月比は25.0%(11件)の減少、前年同月比は増減なしとなった。構成比は4.0%で、前月(4.8%)、前年同月(4.2%)をそれぞれ下回っている。
民事再生法は51件(前月76件、前年同月48件)で、前月比は32.9%(25件)の減少となったものの、前年同月比は6.3%(3件)の増加となった。構成比は6.2%で、前月(8.3%)を下回ったが、前年同月(6.0%)を上回っている。
■地域別
関東は2005年4月以降で最多
9地域中、関東(348件、前年同月比+29.4%)、北陸(31件、同+19.2%)、近畿(195件、同+0.5%)、中国(36件、同+28.6%)、九州(58件、同+5.5%)の5地域で前年同月を上回った。
とくに、関東(348件)は法的整理のみに集計対象を変更した2005年4月以降で最多となり、これまで最多だった2005年10月(342件)を6件上回った。
一方、北海道(24件、前年同月比△44.2%)、東北(48件、同△9.4%)、中部(68件、同△36.4%)、四国(9件、同△55.0%)の4地域は、前年同月をそれぞれ下回った。
【 今後の問題点 】
■帝国データバンクが発表したTDB景気動向調査によると、2007年4月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月(45.5)比0.2ポイント減の45.3と3ヵ月ぶりに小幅悪化に転じた。
■3月の景況感を押し上げた年度末要因がなくなったことで、建設業界や鉄鋼関連業界など年度末特需に沸いた業界を中心に景況感が後退したほか、個人消費・「脱談合」の加速に対する不安や米国経済、原油価格、為替の動向などへの懸念が依然としてくすぶっていることで、多くの企業がリスク見極めの慎重姿勢を崩さなかった。
■業界別にみると、『サービス』が判断の分かれ目となる50ポイントを上回ったのに対して『建設』は依然として30ポイント台、規模別では大企業と中小企業の景況感格差が8ヵ月ぶりに4ポイント台に拡大、地域別でも『東海』と『北海道』では13ポイント台の格差が生じているなど、業界間、規模間、地域間格差は一向に縮小する気配はみられない。設備投資や雇用意欲の拡大など国内経済は堅調が持続しているものの、その恩恵を享受しているのは大都市圏における一部の業界大手企業に限られ、建設業を中心とした内需関連企業や地方圏、中小・零細企業にとってはいまだ景気回復を実感できない状況にあるのが実態である。
■こうしたなか、2007年4月の法的整理による倒産は817件となり、年度末で例年倒産が増える傾向にある前月(916件)を10.8%下回ったものの、前年同月(795件)比では2.8%増と7ヵ月連続の増加となった。また、負債総額は5912億6800万円となり、前月(4730億7600万円)比25.0%増、前年同月(4218億6200万円)比40.2%増とそれぞれ大幅に上回った。
■負債額上位をみると、今年2番目の大型倒産となった元イ・アイ・イーグループのシーコム(株)(旧商号:日新汽船(株)、負債1097億円、東京)やゴルフ場経営の総武都市開発(株)(負債386億円、東京)など、バブル処理が粛々と進められる傾向はこれまでと変化がなかったが、認定切れ遊技機の撤去期限が6月末に迫るパチンコ業界大手(株)ダイエー(負債636億円、福島)など実体のある大型倒産が発生し、負債総額が押し上げられた。また、鉄骨工事の大川トランスティル(株)(負債110億5000万円、新潟)の倒産は、公共事業の縮小と「脱談合」の加速、資源高による仕入れ価格上昇によって利益低下に見舞われている建設業界の窮状を改めて示した。
■一方、負債1億円未満の中小・零細企業の倒産も前年同月比9.7%増加、業種別では土木建築サービス、ホテル・旅館経営などのサービス業や小売業など内需関連の倒産が引き続き目立った。景気回復局面にありながら「不況型倒産」の割合が73.3%と7割を大きく上回っているのは、倒産の二極化構造の深化が最大の要因といえる。
■4月の景気動向調査で「脱談合」の影響について尋ねた結果、「すでに影響が出ている」企業は全体の1割強だったが、建設業界では41.4%とすでに4割以上にものぼっていることが判明。今後も「脱談合」の加速が避けられないなかでは、景気回復感の乏しい地場建設会社や下請け業者は一層窮地に追い込まれることになる。また、資源価格の高騰や個人消費の回復遅れ、金利引き上げや貸金業法の改正による融資の引き揚げ圧力なども、中小・零細の企業体力を徐々に疲弊させており、ここにきて中堅規模の企業経営にも打撃を与えはじめている。
■内需関連業界や中小・零細企業、地方圏企業のさらなる業況悪化が不可避な状況下、小口倒産の続発によって倒産件数は今後も緩やかな増加ペースをたどる公算が大きい。水面下では粉飾や不透明な取引の横行、コンプライアンスへの疑義などの火種がくすぶっているうえ、「脱談合」や資源高の影響による倒産も大型化の様相を呈している。さらにパチンコ業者の倒産続発も予想されることから、これまで比較的落ち着いていた負債総額が膨らむ可能性も否定できない。