富士経済、医療用医薬品12薬効領域の調査結果を発表
医療用医薬品12薬効領域の調査を実施
-2015年の抗がん剤市場予測6,550億円(06年比144%)に拡大-
総合マーケティングビジネスの(株)富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 代表取締役 阿部英雄03-3664-5811)は、抗がん剤や経腸栄養剤など12薬効領域の疾患概要、患者動向、治療薬剤、市場概況、開発状況、市場予測などの調査を行った。その結果を調査報告書「2007医療用医薬品データブックNo.5」にまとめた。
2年に1回の医療用医薬品市場の調査は、今回06年1月開始以来、6回に分けてその結果を報告している。
の報告書は、その5回目をまとめたものである。がん関連用剤、栄養補助剤、麻酔・筋弛緩剤、免疫抑制剤、体内診断薬、そして消毒剤について、製品開発および販売戦略を立案する支援データを提供することを狙いとした。
1.対象12領域市場
<調査結果のポイント>
今回の調査対象12薬効領域は、腫瘍の新製品開発競争に伴うがん関連用剤を中心に、経腸栄養剤、免疫抑制剤が拡大を続ける結果、15年には06年から23%拡大して1兆2,970億円に達すると予測される。
※参考資料を参照
●がん関連用剤 2015年7,750億円(06年比143%)
各種化学療法用剤の中から、抗がん剤、CSF、制吐剤、がん疼痛治療剤の4領域を取り上げた。抗がん剤は副作用の多い領域であり、その感染症治療剤については報告書No.1で、消化器官用剤は同No.2でまとめた。抗がん剤ががん関連用剤市場の80%強(06年)を占めており、10以上の薬剤分類に分けられるほど製品開発の細分化が進んでいる。
*CSF(colony stimulating factor):コロニー刺激因子骨髄細胞の増殖・分化を促進する薬剤
外科的な手術療法、放射線療法などが不可能かあるいは転移性のがん治療には、化学療法で対処するため、抗がん剤市場は今後も拡大する。薬剤ニーズがあるもののそれに応え得る薬剤がない(アンメットニーズ)疾患が数多く存在する領域で、医薬品企業もこの領域に重点的に取り組み、ペプチド医薬、樹状細胞医薬、遺伝子治療など新しい薬剤分野の研究開発も進められており、市場拡大の牽引役となる可能性が高い。50才以上では遺伝子に対する自己修復機能や免疫機能が充分に働かなくなる確率が高くなると言われており、高齢化の進展とともにがん患者が増加している。また海外と国内で投与可能な薬剤が異なる制度的な障壁に関して行政サイドの改善・解消に向けた動きが見られ、プラス要因のひとつとなっている。
CSF、制吐剤、がん疼痛治療剤などの補助療法剤、周辺用剤は関連市場の20%(06年)に過ぎない。
CSFは白血球減少症に対する治療剤であるが、薬価が高く医療費の高騰を招く一因と見なされ、適性使用が厳格化されて、がん患者の増加に対して唯一横ばいに近い推移になっている。がん疼痛治療剤は、がん患者の増加に加え、ターミナルケア、緩和医療の浸透やがん患者の除痛自体が患者のQOL改善に繋がるという認識、管理が容易な剤形の薬剤の浸透などから着実に市場を拡大している。
●栄養補助剤 2015年2,502億円(06年比100%)
幅広い疾患に処方される薬剤であり、高齢者人口の増加により処方数は増加しているが、薬価の引き下げや食品規格の経腸栄養剤と競合が激化して単価が下がり市場規模は伸びないと予測する。近年、経腸栄養剤の増加で栄養補助剤の市場規模は微増となりつつあるが在宅医療の拡大に伴う利用者の増加が寄与していると見られる。ビタミン剤は処方開拓が一巡して、新製品の投入や処方の拡大に結びつくような知見も見当たらないため市場が縮小している。
●麻酔・筋弛緩剤 2015年558億円(06年比104%)
麻酔用剤は幅広く治療に用いられるので、大きく市場が変動することはない。また、筋弛緩剤は脳性麻痺や腰痛症が主要な適応となっているが、これら疾患も急激に患者数が増減することはなく市場に大きな変化はない。但し、「ボトックス」(グラクソ・スミスクライン)は眼瞼麻痺、片側顔面麻痺などに適応する末梢性筋弛緩剤で、独自の処方を拡大して売上を伸ばしている。今後どこまで実績を拡大するか注目される。
●免疫抑制剤 2015年600億円(06年比154%)
「臓器移植法」に基づく脳死体からの臓器移植は予想に反して進んでいないが、生体からの腎臓移植や造血幹細胞移植は増えている。学会は病気腎に対する移植には慎重な態度を取っているが、臓器移植の実施を留めるには至らないと考えられ、今後も移植件数の増加が免疫抑制剤市場拡大の最大要因となる。
●体内診断薬 2015年1,410億円(06年比96%)
造影剤、放射性医薬品(体内診断用)、H.ピロリ菌検査剤を対象とした。医療費の抑制圧力が強まっていること、DPC(診断群分類に基づく医療費の包括請求制度)導入施設の増加により検査を減らす動きが強まると見られ、体内診断薬使用の減少要因になると考えられる。最も市場規模の大きいX線造影剤を中心にジェネリック医薬品へシフトし後発品が拡大して、金額ベースの市場規模が縮小すると見られる。MRI・超音波造影剤は、検査機器の普及に伴って処方が拡大し今後体内診断薬市場の中心となると予測される。
2.注目市場の動向
●抗がん剤 2015年6,550億円(06年比144%)
日本人の3人に1人ががんで死亡するまでにがん発症人口が増えて、抗がん剤市場拡大の最大要因となっている。特に50才以上の発症が多く、高齢化社会に向かう日本では今後さらに患者が増えると予測される。
胃がんや乳がん、大腸がんは、「早期発見、早期治療」のため、健康診断検査項目に盛り込まれ、精度の高い検査方法の導入が進んだ結果、厚生労働省の「患者調査」でも患者の減少が見られる。しかし全体では高齢化の進展を背景に発症患者は増加しており中でも、肺がん、前立腺がんの患者数増加が目立っている。02年から05年にかけて抗がん剤市場は2ケタの高成長となった。乳がんにおけるホルモン療法の有効性が広く浸透し、抗がんホルモン剤におけるLH-RHアゴニスト製剤が市場を牽引したこと、分子標的治療剤が新たな市場を形成するに至ったことによる。治療ニーズに新製品が応えることが出来、市場拡大に結び付いた。06年は薬価改定の影響もあったが、05年まで市場拡大を牽引して来た抗がんホルモン剤と分子標的治療剤の2薬剤領域における上位製品で伸び率が大きく鈍化したために、抗がん剤市場全体の伸び率は4%の伸びに留まった。
一方で、白金製剤のように引き続き適応拡大により着実に実績を拡大している製品もある。07年中には大腸がんの分子標的治療剤「アバスチン」が市場に投入されるものと見られ、08年以降市場は再び拡大することが予測される。
海外製品に対する日本での投入時期の差異、「ドラッグラグ」問題に対して行政サイドも解消に向けて動き始めており、治療現場のアンメットニーズに対応した新製品は今後の市場拡大の原動力となって行くことが予測される。肺がん適応薬剤では「イレッサ」を巡り紆余曲折を経て未だ治療現場のアンメットニーズに対応し切れてはいないと考えられ、「タルセバ」「オムニタグ」と言った分子標的治療剤の承認・登場が待たれる。他には膵臓・肝臓・腎臓のがんに適応した新薬が市場拡大に貢献することが予測される。
抗体医薬やペプチド医薬、遺伝子治療などに関しては海外でも未だ実績がない分野だけに、新技術が製品の形で現実のものとなれば、抗がん剤市場は更に高い伸びを示すと考えられる。
●経腸栄養剤 2015年895億円(06年比112%)
経腸栄養剤は幅広い疾患で栄養補給のために利用され入院時処方だけではなく、在宅の寝たきり患者にも利用される。高齢者人口の増加がダイレクトに需要拡大に繋がっており、市場拡大の最大要因となっている。
医薬品分類の経腸栄養剤は53%(06年)を占めるが新規の承認が得られず、既存品による展開を強いられている。NST(Nutrition Support Team:診療科に依らず病院内での栄養療法に携わる横断的なプロジェクトチーム)活動が強まる中で輸液製剤も含めたトータル的なプロモーションにより処方拡大を目指す動きが活発になっている。
食品分類では、需要の拡大に対応して新製品の投入や味覚面や容器・容量のバリエーション化が進んでおり、風味や使い勝手の改良、患者の選択肢の拡大といった要因により市場の活性化を図ろうとしている。
06年4月の診療報酬改定で栄養管理実施加算が新設されたことにより、栄養管理の実施が病院経営にとってもプラスとなることが明らかになり、経腸栄養剤の処方が拡大され始めた。一方、医療の質の改善のためDPCを導入した病院の増加や入院期間の短縮化は病院における使用量や医薬品・食品の使用比率に影響を及ぼすと考えられ、参入各社はこのような変化に機敏な対応を求められる。また、販売チャネルとして在宅や福祉施設も重要度が増すと考えられ、これらのチャネルへの対応度もシェア変動に影響を与える。高齢化進行に伴い食品の経腸栄養剤も需要は拡大すると考えられるが、熾烈なシェア争いや価格競争も更に激化することが確実であり、金額ベースでの伸びは量的な伸びより小幅なものに留まると予測される。
<調査方法> 弊社専門調査員による対象企業、関連企業・団体への面接・電話取材
<調査対象>
1.がん関連用剤 1)抗がん剤 2)CSF 3)制吐剤 4)がん疼痛治療剤
2.栄養補助剤 1)輸液製剤 2)経腸栄養剤 3)ビタミン剤
3.麻酔・筋弛緩剤 1)麻酔用剤 2)筋弛緩剤
4.免疫抑制剤
5.体内診断薬
6.消毒剤
<調査項目>
1.対象疾患の概要
1)対象疾患のトレンド 2)対象疾患の定義 3)診断基準 4)ガイドライン・分類
2.患者動向
1)厚生労働省「患者調査」 2)厚生労働省「社会医療診療行為別調査」 3)その他厚生労働省による調査
4)国内・国外学会による患者数・疫学調査 5)検査の動向 6)患者数の現状分析と将来予測
3.治療薬剤
1)薬剤分類 2)主要製品リスト 3)治療パターン・薬物療法の位置付け
4.市場概況
1)市場規模推移 2)分類別市場規模3)メーカー・ブランドシェア
5.開発状況
1)開発中製品一覧 2)注目開発品の概要
6.今後の方向性
1)市場規模の変化 2)市場環境予測による市場変化 3)プロダクト・ガイドラインによる市場変化
<調査期間> 2007年2月~4月
以 上
資料タイトル:「2007医療用医薬品データブックNo.5」
体裁:A4判295ページ
価格:160,000円(税込み16 8,000円)
調査・編集:富士経済東京マーケティング本部第二事業部
TEL:03-3664-5821(代) FAX:03-3661-9514
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