日立、減量プログラム「はらすまダイエット」の遠隔指導支援システムを試作
減量プログラム「はらすまダイエット」の遠隔指導支援システムを試作
Webを用いて多数のメタボリックシンドロームの人々を保健指導することが可能に
株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、このたび、メタボリックシンドローム*1である人々の生活習慣を改善することを目的に開発された減量プログラム「はらすまダイエット*2」を、効率的かつ効果的に実施するための遠隔指導支援システムを試作しました。「はらすまダイエット」は、日立と学校法人産業医科大学公衆衛生学研究室(教授:松田晋哉/以下、産業医大)ならびに株式会社損保ジャパン総合研究所(社長:佐藤正敏/以下、損保ジャパン総研)が共同で開発した、90日間で体重の5%減量を目標に取り組むプログラムです。これまで、参加者の約60%のメタボリックシンドロームの状態が解消され、さらには、参加者の平均体重が約5kg減少するという効果が確認されています。今回、日立は、「はらすまダイエット」をより多くの参加者に提供するとともに、指導効果を向上させるために、Webシステムによる遠隔指導支援システムを試作しました。日立では、2007年3月よりこの試作システムを用いた社内での実証実験を行い、早期実用化に向けて、今後、さらなるシステムの改善に取り組む予定です。
近年、高血圧、肥満、高脂血症、高血糖を引き起こす生活習慣病として、メタボリックシンドロームへの関心が高まっています。2005年4月には、厚生労働省が医療制度改革の基本方針として、メタボリックシンドロームの早期診断と保健指導を徹底する体制整備を打ち出すなど、国を挙げての取り組みが進められています。
このような背景のもと、日立の従業員の健康を管理する日立健康管理センタでは、産業医大ならびに損保ジャパン総研と共同で、安全で確実かつ効果の高い減量プログラムとして、「はらすまダイエット」を開発しました。これは、90日間で体重の5%減量を目標に取り組むプログラムで、保健師と参加者が、面談で食事制限や運動などの減量メニューを決めた後、参加者がその実施状況と朝晩の体重を日々記録して、10日ごとに保健師に記録内容を報告、アドバイスを受けるというものです。明確な目標の設定や、日々の体重測定によって経過を検証できるという特長をもち、昨年、日立健康管理センタがメタボリックシンドロームと診断された日立社員53名を対象に行った実証実験では、実施後に参加者の約60%が同診断の解除を受け、さらには、参加者が平均5kgの減量に成功するという効果が確認されました。
一方、この実証実験では、保健師と参加者がメールを用いて状況の報告や今後の指導などについてのやり取りが行われる中で、保健師が参加者の日々の経過を確認できないことや、保健師の作業負担が大きいことなど、運用における課題が見出されました。また、現在、約1,940万人と推定されるメタボリックシンドロームの該当者及びその予備軍に対して、保健指導を実施する指導者は保健師・管理栄養士などに限られているという状況のなか、このプログラムを用いて効果の高い指導をどれだけ多くの該当者に提供できるかという点が課題でした。
そこで、今回、日立は、実証実験での保健師と参加者のやり取りを詳細に分析し、指導者が複数の参加者に対して適確な指導を効率的に行えるとともに、参加者に対して日々の活動と体重変化の関係をわかりやすく表示するなど、参加者の意識を高めることのできる、インターネットを利用した遠隔指導支援システムを試作しました。
試作したシステムの特徴は次の通りです。
1.指導者から参加者への適確な指導を支援する保健師業務支援機能の搭載
本システムでは、Web上のサーバでデータが管理されるため、参加者が日々入力する減量メニューの実施状況や体重を、遠隔地の保健師が随時確認することができます。また、10日ごとの進捗確認作業は、その日の該当者を自動的に抽出する機能により、もれなく実施することができます。さらに、入力されたデータを自動解析して、減量メニューの実行数に対して体重減少量の割合が小さい順に参加者をソートして表示する機能や、数日間連続してデータ入力のない参加者を自動的に抽出することが可能です。これにより、対応の必要度が高い人から優先した指導や、プログラムの継続を促す指導を行うことが可能です。
2.参加者のやる気を支える容易な入力とわかりやすい経過表示方法の実現
参加者は目標登録画面で減量メニューや目標体重の入力を行います。また、減量記録画面から日々の体重とメニュー実行の有無、さらには会食や出張、体調不良などの特記事項を入力することができます。入力されたデータは減量記録表示画面で、体重変化のグラフが減量メニューの実行状況や特記事項とあわせて一覧表示され、行動と体重変化の関係を自ら検証することができます。
試作したシステムは、インターネットを介してパソコンや携帯電話、PDAから利用することが可能です。指導者が複数の参加者に対して指導業務を効率的に行うことを支援すると同時に、参加者が自ら学びながら参加する環境を提供することが可能となり、複数の参加者に対して効率的、効果的な指導が期待できます。日立では、3月上旬から、茨城県日立市の日立健康管理センタの保健師が、東京都国分寺市の中央研究所で勤務するメタボリックシンドロームと診断された社員約10名に対し、試作システムを用いて「はらすまダイエット」を実施する実験を開始しました。今後、さらに実施事業所を拡大し、規模の拡大を図るとともに、使いやすさと指導効果の向上に向けたシステムの改良を進め、早期実用化をめざしていきます。
*1:内臓脂肪症候群とも呼ばれ,動脈硬化による心疾患や脳血管疾患のリスクが高いとされる。内臓脂肪面積(>=)100cm2(腹囲では男性(>=)85cm,女性(>=)90cmに相当)で、且つ、以下の(1)~(3)のうち2つに該当する場合に、メタボリックシンドロームと診断される。
(1)空腹時血糖(>=)110mg/dL
(2)中性脂肪(トリグリセライド)(>=)150mg/dLまたはHDLコレステロール<40mg/dL
(3)最高血圧(>=)130mmHgまたは最低血圧(>=)85mmHg
*2:Hitachi Associates LifeStyle Modification and Action(HALSMA)。参加者が日々の体重と生活習慣改善結果を記録し、保健師のアドバイスを受けながら90日間で5%の減量をめざす減量プログラム。目標体重まで減量するための生活習慣の改善項目を、100 Kcal単位で選択可能な「100Kcalカード」の中から、自分が無理なく実行できるものを数枚選び、実行する目標を設定する。なお、「はらすまダイエット」は日立の商標です。
以 上