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ニュースリリースのリリースコンテナ第一倉庫

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2024'11.26.Tue
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2007'05.30.Wed

理化学研究所など、SMAP法の臨床応用に向けた共同研究を開始

SMAP法の臨床応用に向けて
シンガポール国立大学病院と共同研究が始動
- 手術中に抗がん剤の効果を診断、的確な医療の実現目指す -

◇ポイント◇
 ●国外と初のSMAP法を活用したオーダーメイド医療の臨床応用の共同研究を開始
 ●“ゲフィチニブ”の感受性を術中迅速診断する臨床応用でアジアに貢献
 ●シンガポールの病院との協力で国際的な汎用化に弾み


 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)とシンガポール国立大学(Shih Choon Hong学長)およびシンガポール国立大学病院(Chua Song Khim院長)、株式会社ダナフォームは、肺がん治療のオーダーメイド化※1を実現する迅速かつ正確な診断法(「SMAP法※2」)の臨床試験に向けた、実質的な共同研究を始動しました。SMAP法は、理研ゲノム科学総合研究センター(榊佳之センター長)の遺伝子構造・機能研究グループ(林崎良英プロジェクトディレクター)を中心とする共同研究グループが開発した診断法で、ごく少量の検体を前処理試薬と混合し加熱処理後、そのまま増幅試薬に添加し、60℃で反応させる簡便で迅速な国産のSNP※3の診断技術です。
 研究グループは、横浜市立大学医学部などと肺がんに用いられる抗がん剤ゲフィチニブ(商品名:イレッサまたはタルセバ)の感受性をSMAP法により迅速に調べる臨床研究を行っていますが、日本国外のパートナーとしてはシンガポール国立大学および大学病院が初の共同研究となります。
 肺がんは、シンガポールでは男性の死因の第1位となっており、女性でも第3位を占めています。これまでの世界各国の研究で、上皮性増殖因子受容体(EGFR)遺伝子に変異のある肺がん患者では、EGFRをブロックするゲフィチニブが顕著に効果を示し、末期がん患者においても生存率が上がることがわかっています※4。しかし一方では、ゲフィチニブには「間質性肺炎」という極めて重篤な副作用があります。そこで、EGFR遺伝子の変異の有無を調べて、患者にゲフィチニブが有効かどうかを事前に調べることにより、より良い治療ができるものと考えられています。
 従来は、病巣の腫瘍を外科的に切除した後で、細胞採取して検査し、ゲフィチニブが有効かどうかを調べていますが、この検査プロセスにはおよそ3週間も要します。共同研究チームでは、手術中に取り出したごく少量の組織片にSMAP法を適用することにより、診断に要する時間を1時間以下に大幅短縮できると考えています。
 シンガポール国立大学病院では、まずは、40名の肺がん患者の組織を用いた試験を行い、この中で、SMAP法と既存のPCR法※5による診断の正確さと効率性を比較し、SMAP法の有効性を確認していくことにしています。この研究は、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)のサポートを受けており、1年間で約100名の患者に適用するほか、将来的には、他の疾患においてもSMAPキットの試験を行なう計画です。


1.背 景
 人間の遺伝情報は、約30億個の塩基対で構成されており、個人ごとにその配列は異なります。この配列の違いを「遺伝子多型(いでんしたけい)」と呼び、特に、一塩基の違いを「SNP」(Single Nucleotide Polymorphism、一塩基多型:スニップ)と言います。この違いによって体内の酵素の働きなどが異なり、病気のかかりやすさや薬の効き方に個人差があらわれます。SNPを簡便、迅速に臨床現場で調べることができると、患者個人の体質に合った治療を行う「オーダーメイド医療」が実現でき、副作用の回避が可能になるとともに、年間数千億円といわれる副作用によって発生する医療費が軽減され、年々増大する医療費を抑制する効果が見込まれます。
 通常、SNPを調べるためには、血液からDNAを精製して増幅し、その増幅したDNAを様々な方法で解析することが必要でした。そのため、作業が煩雑で、それぞれの試薬や特別に設計した高価で特殊な装置が必要となり、診断結果を出すまでに1時間半から数日程度かかっていました。そこで研究グループは、術中診断、外来初診診断を可能とする診断時間の短縮(検体採取後30分以内)、操作の簡便化などを実現した新規遺伝子診断システムSMAP法を開発し、2007年2月『Nature Methods』誌に発表しました(平成19年2月19日プレス発表)。この開発した手法の特徴は、親から受け継いだ遺伝子のタイプを調べられるだけでなく、正常細胞中にごく微量に発生したがん細胞に特異的なDNA変異をマーカーにして、リンパ節転移の有無のみならず、正常細胞中のがん細胞の含有比率まで計測することができるポテンシャルを有しています。具体的には個体組織をすりつぶして前処理試薬に加え、加熱処理した検体を用いた場合、30分程度で正常細胞とがん細胞比が、99:1程度(がん細胞率1%)の検出が可能です。
 すでに2007年3月より、横浜市立大学医学部と協力し、肺がんに用いられる抗がん剤ゲフィチニブの感受性をSMAP法により迅速に調べる臨床研究を行っており、これまでに45名の患者に実施されています。


2.研究内容と意義
 理研とシンガポール国立大学およびシンガポール国立大学病院は、SMAP法を用い、がん抑制効果の有効性とともに、「間質性肺炎」という副作用が社会問題となった抗がん剤(ゲフィチニブ)について、効果及び副作用の出現に関与している上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子内の変異の手術検体の直接迅速診断による検出試薬の薬効評価検討を開始する予定です。手術中にゲフィチニブへの感受性を調べることにより、個人に合わせた術式の選択を行います。つまり、EGFR遺伝子に変異があり、ゲフィチニブの効果が期待できる患者に対しては、呼吸機能の保存のため、切除する部分をできる限り少なくして、術後のゲフィチニブによる治療を行ったほうが、良い予後が期待できます。一方、ゲフィチニブの効果が期待できない患者に対しては、がん組織を残さないよう大きく切除します。SMAP法は、迅速・簡便に診断ができるため、手術中にその診断結果を出すことができます。
 シンガポール国立大学病院は、世界的な水準をもつ病院であり、国際的な臨床研究に積極的に取り組んでいます。今回の共同研究を通し、日本の技術をいち早くアジアに紹介することができ、アジアの医療の高度化に対する大きな貢献が期待されます。


3.今後の期待
 SMAPキットでは、必要なサンプル(組織)採取が非常に少量で検査が可能なため、外科手術の前に生体検査を行って、ゲフィチニブによる治療への感受性を診断することもできます。これにより、医師と患者が治療のごく初期段階でより良い治療の方針を話し合うことができるようになると考えられます。
 将来的には、他の疾患においてもSMAPキットの試験を行いたいと考えています。また、より小型で簡便な診断デバイスの開発を進めており、今回の共同研究の結果と合わせて、将来的には個人が自分自身の健康を自分で管理できるシステムの構築に弾みがつくと期待されます。


4.各機関概要
1)独立行政法人理化学研究所
 独立行政法人理化学研究所は、科学技術(人文科学のみに係るものを除く)に関する試験及び研究等の業務を総合的に行うことにより、科学技術の水準の向上を図ることを目的とし、日本で唯一の自然科学の総合研究所として、物理学、工学、化学、生物学、医科学などにおよぶ広い分野で研究を進めています。研究成果を社会に普及させるため、大学や企業との連携による共同研究、受託研究等を実施しているほか、知的財産権等の産業界への技術移転を積極的にすすめています。

2)株式会社ダナフォーム
 株式会社ダナフォームは、理化学研究所初のベンチャー企業であり、理化学研究所で開発された特許技術の実用を目指しています。また完全長 cDNAライブラリーの受託製造、理研マウスFANTOMRクローンの頒布、DNABookRの頒布、研究用試薬・キットの販売など、あらゆる遺伝子の機能研究をサポートしています。さらには、新規開発したSMAP法を用いた遺伝子診断技術を提供し、研究開発から創薬研究開発までをトータルサポートします。

3)シンガポール国立大学
 シンガポール国立大学(NUS)は独自の教育法と研究、起業家精神を特色とした、国際総合大学です。88の国々からの学部生23,500人と大学院生9,000人が、多様性と国際性を兼ね備えた大学で学んでいます。NUSは、世界中でも上位の大学に位置づけられ、特に、技術、生物医学、社会科学などの学部もその専門性で注目されています。

4)シンガポール国立大学病院
 シンガポール国立大学病院(NUH)は、1985年に設立され、シンガポールの唯一の大学病院として、質の高い医療教育を供給し、医療研究を先導する役割を担っています。NUHの高水準の医療は、2004年8月に病院認定国際委員会から、また、2004年7月、シンガポールサービスクラスから公式認定されていることからもわかります。


*補足資料は、添付資料をご参照ください。

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