松下電工、通電刺激により歯肉細胞の増殖活性が高まることを確認
歯肉細胞の細胞増殖活性に対する通電刺激の影響
~ 第50回春季日本歯周病学会学術大会(2007年5月開催)で発表 ~
松下電工株式会社では、岡山大学渡邊教授らのグループと共同で、通電刺激がラットの歯肉に及ぼす影響を細胞増殖活性の観点から検討しました。その結果、歯肉細胞の増殖活性が通電刺激によって高まることを確認しました。 歯肉細胞の増殖活性は歯肉の炎症の予防や改善に役立つことが知られていますが、本研究により、歯肉への通電刺激によって歯肉細胞の増殖活性が高まることで、歯肉の炎症を予防・改善する効果が得られることが示唆されます。
■検証方法
実験には、ウィスター系雄性ラットを使用しました。ラットを6匹ずつの実験群(通電刺激を行う群)と対照群(通電刺激を行わない群)に分けました。さらに、実験群を1週間刺激を与える群と2週間の刺激を与える群各3匹ずつに分けて実験を行いました。
各設定条件での実験完了後、歯と歯肉の組織標本を作製し、以下の点について組織定量分析を行いました。
1.接合上皮基底層(※1)のPCNA陽性上皮基底細胞(※2)数と総上皮基底細胞数を計数
2.結合組織(※3)のPCNA陽性歯肉線維芽細胞数(※4)と総歯肉線維芽細胞数を計数
〈※1〉 接合上皮基底層:
歯肉は上皮と結合組織で構成される。上皮のうち歯のエナメル質と接している部分の上皮が接合上皮である。接合上皮基底層は、接合上皮の一番内側(最下層)に存在し、細胞分裂により細胞を新生する働きを持っている。
〈※2〉 PCNA陽性細胞:
増殖活性を持つ細胞。PCNAはProliferating cell nuclear antigen(増殖細胞核抗原)の略。
〈※3〉 結合組織:上皮の内部(下層)にある組織。
〈※4〉 歯肉線維芽細胞:結合組織を主に構成する細胞。
*歯と歯ぐきの構造、および測定位置については添付資料参照
■検証結果
歯肉細胞の増殖活性は、歯肉への通電刺激によって高まることが示されました。
さらに、通電刺激を行う期間を長くすることによって、歯肉細胞の増殖活性がより高まることが示されました。
■背景
厚生労働省は、「80歳になっても自分の歯を20本以上守ろう」という8020運動を提唱しており、松下電工はこの8020運動を支援しています。しかしながら、厚生労働省の調査によると、80~84歳で20本以上の歯を持つ割合は21.1%、85歳以上では8.3%にとどまり、年々改善傾向にあるとはいえまだまだ低い水準です。さらに、30代~60代の80%以上に、歯肉に何らかの所見(プロービング後の出血、歯石の沈着、4mm以上の歯周ポケット)があることが確認されています。
「8020」の実現には、歯と歯ぐきを健康に保つ適切でより効果的なオーラルケアの広い浸透が不可欠であると考えられます。
今回、歯ぐきの状態を改善する有効な手段として歯ぐきへの通電刺激に注目し、その効果について検証を行いました。(データは2005年歯科疾患実態調査)
※以下、詳細は添付資料をご参照下さい。