米アナログ・デバイセズ、新しい慣性測定ユニット「ＡＤＩＳ１６３５５」を発表
アナログ・デバイセズ、新しい慣性測定ユニット（ＩＭＵ）「ＡＤＩＳ１６３５５」を発表
高度なモーションとナビゲーション制御を産業用アプリケーションに提供する最先端ＭＥＭＳセンサー
アナログ・デバイセズ社（ニューヨーク証券取引所：ＡＤＩ）は、同社のｉＭＥＭＳ（Ｒ） Ｍｏｔｉｏｎ Ｓｉｇｎａｌ Ｐｒｏｃｅｓｓｉｎｇ Ｔｅｃｈｎｏｌｏｇｙ（ＴＭ）（モーション・シグナル・プロセッシング技術）を駆使して開発した新しい慣性測定ユニット（ＩＭＵ）「ＡＤＩＳ１６３５５」を発表しました。ＡＤＩＳ１６３５５により、これまでは防衛、航空宇宙などのハイエンドのアプリケーション向けに限られていた高度なモーション解析とナビゲーション推測航法機能を、初めて産業用システムにも装備できるようになり、コストも従来の約１／１０に抑えられます。ＡＤＩＳ１６３５５は、産業用システムの設計において容易に組込みが可能で、その高精度なモーション解析と制御により、システムの性能を強化できるだけでなく、設計者は、最高で１２ヶ月も開発期間を短縮することができます。
全地球測位システム（ＧＰＳ）衛星によるナビゲーションは、いまやインターネットと同様に、日常生活の様々なシーンで使われています。ＧＰＳのおかげで、緊急車両は、生死に関わる差し迫った場所に最も早く到達するルートを見出し、海洋考古学者は、難破船を探す学術調査船に方向指示を出すことができます。また農業経営者は、最大限の収穫を得るために、どこに農業用機器を置けばいいのかをＧＰＳを使って決定します。
ＡＤＩが投入した新しい慣性センシング・ソリューションのＡＤＩＳ１６３５５は、ＧＰＳ衛星ナビゲーションによる正確な位置情報を常に必要としている運送用のトラック、農業用機器、商業用や小型航空機、船舶、タンカーなどの車両において、ＧＰＳの信号ロスや車両による誤差を補正します。
ＡＤＩＳ１６３５５は、線型加速と角運動のわずかな変化を検出し、推測航法を可能とします。これにより、失われたＧＰＳ信号が回復するまで、進路／経路を維持できます。ＡＤＩＳ１６３５５は、ナビゲーションだけでなく、高感度のロボットやその他のモーション・コントロール機器にも適しており、高精度な動きが何千回も正確に繰り返されるのを確認する手助けをします。たとえば、ＡＤＩＳ１６３５５は、映画制作において空中カメラを安定させたり、ファクトリ・オートメーションでロボット・アームを制御したり、義肢の安定性を保証するなど様々な用途があります。
ＡＤＩＳ１６３５５は、ＡＤＩのインテリジェント・センサー製品ファミリーｉＳｅｎｓｏｒ（ＴＭ）に加わった新しい慣性測定ユニット（ＩＭＵ）です。ｉＳｅｎｓｏｒファミリーは、産業用市場で伸び続けるＭＥＭＳモーション・センサーの需要増に対応するために開発されました。ＡＤＩは、現在までに３億個を超えるｉＭＥＭＳモーション・センサーを出荷しました。
ＡＤＩＳ１６３５５は、ジャイロスコープと加速度センサーとをコスト効率よく組み合わせた多軸モーション・センサーで、Ｘ、Ｙ、Ｚ軸方向の線型運動およびＸ、Ｙ、Ｚ軸の周りの回転という６つの機械的自由度（６ＤＯＦ）をすべて測定できます。他の集積度の低いセンサーを使った場合、デバイスの正確で安定した結果が得られるまで、コストと時間のかかる複雑なモーション・テストとキャリブレーションを、複数の軸で行わなければなりません。ＡＤＩは、製造工程においてＡＤＩＳ１６３５５の総合的なファクトリ・キャリブレーションを行い、シンプルでプログラマブルなインターフェースを付加することにより、このような設計上の課題を克服し、箱から取り出したらすぐにシステムに組込めるようにしました。新デバイスのうち、「ＡＤＩＳ１６３５０」は室温キャリブレーションを行っているのに対し、ＡＤＩＳ１６３５５は全温度範囲のキャリブレーションを行っており、０．００５度／秒／℃という優れたバイアス温度安定性が特長です。
■５０倍も高精度で、容易な組込み
価格範囲が数百ドルから数千ドルの同様のデバイスでは、ＡＤＩＳ１６３５５とＡＤＩＳ１６３５０のような高い精度レベルを提供することはできません。さらに、ＡＤＩの新しい慣性測定ユニット（ＩＭＵ）デバイスは、他の市販の慣性センサーに比べ、５０倍もセンサー精度を改善します。従来は、単純なセンサーを基にして完全なソリューションに統合し試験を行うことは極めて複雑で、設計者にとって大きな課題となっていました。
ＡＤＩＳ１６３５５とＡＤＩＳ１６３５０は、卓越したコスト・性能比と、これまでにない使い易さを兼ね備えているので、モーション・センシング機能を広範囲なアプリケーションに迅速に組込むことができるようになります。
アナログ・デバイセズ社ｉＳｅｎｓｏｒインテリジェント・センサー製品事業部門のディレクタ、アンディ・ガーナー（Ａｎｄｙ Ｇａｒｎｅｒ）は次のように述べています。「多くのモーション・センサーは、キャリブレーションなしに出荷されているので、その性能は、電圧、温度、振動、およびＩＭＵ内の他のセンサーに敏感に反応する可能性があります。そのようなセンサーを、複雑なシステム内で利用できるようにすることは、技術力の高い設計者にとっても難題です。ＡＤＩでは、独自のテスト手法を用いて、あらゆるＩＭＵキャリブレーションと補償を行っています。これにより、お客様における開発期間を最高１２ヶ月も短縮でき、さらに、数十万ドルのテスト機器費用を節約することができます」
■ＩＭＵ「ＡＤＩＳ１６３５５」 について
ＡＤＩＳ１６３５５は、３軸の角速度センシングと３軸の加速度センシングを組み合わせて、６軸のモーション・センシング、組込みキャリブレーションとセンサー処理、センサー間のクロス補償、そして大幅な信号安定性の改善（動作時バイアス安定性０．０１５度／秒）を、１インチ立方以下の小さなフォーム・ファクタで提供します。ファクトリ・キャリブレーションと軸間の組込みアラインメント補償により、センサーを専門としない設計者でも、モーション・センシング技術を迅速かつ容易に、コスト効率よく組込み、全く新しい次元の性能をアプリケーションに追加することができます。ＡＤＩＳ１６３５５とＡＤＩＳ１６３５０は、プログラマブルＳＰＩ（シリアル・ペリフェラル・インターフェース）ポートを内蔵しているため、フィルタリング、サンプリング・レート、パワーマネジメント、セルフ・テスト、そしてセンサー状況ステータスおよびアラームなどの機能を容易にプログラミングできます。また、デバイスはフル・インシステム・チューニングに対応しているので、設計者は、迅速かつ容易にシステムをデバッギングし、設計最適化のために様々なコンフィギュレーションを用いて実験できます。ＡＤＩＳ１６３５５は、高精度で安定した優れたセンサー応答を提供し、ＡＤＩＳ１６３５０は、低感度のアプリケーション向けに、低コストの代替ソリューションを提供します。
■供給と価格について
ＡＤＩＳ１６３５０は、現在出荷中で、単価は１，０００個受注時で２７５ドルです（米国における参考価格です）。ＡＤＩＳ１６３５５は、２００７年７月にサンプル出荷開始、同年９月に量産開始の予定です。単価は、１，０００個受注時で３５９ドルです（米国における参考価格です）。両デバイスとも２３ｍｍ × ２３ｍｍ × ２３ｍｍのコンパクトなモジュールとなっています。詳細情報に関しては、ウェブサイトhttp://www.analog.com/pr/ADIS16355をご覧下さい。
■アナログ・デバイセズについて
アナログ・デバイセズ（ＡＤＩ）は、技術革新、高性能、そして卓越した技術力を企業文化として継承し、半導体市場において長期にわたり高い成長を示してきました。
ＡＤＩは、データ・コンバージョンとシグナル・コンディショニング技術の世界的リーディング企業として業界で高い評価を得ており、あらゆる種類の電子機器分野を取り扱う世界各国６０，０００社以上の顧客に製品を提供しています。アナログおよびデジタル信号処理アプリケーションに用いられる高性能集積回路の世界的なリーディング・メーカーとして、４０年以上の歴史を誇るＡＤＩは、本社をマサチューセッツ州ノーウッドに構え、全世界で約８，９００人の従業員を擁します。製造工場は、マサチューセッツ、カリフォルニア、ノース・カロライナ、アイルランド、フィリピンにあります。アナログ・デバイセズはニューヨーク証券取引所に上場しており（ティッカ－：ＡＤＩ）、ＡＤＩはＳ＆Ｐ ５００インデックスに挙げられています。
※ｉＳｅｎｓｏｒ とＭｏｔｉｏｎ Ｓｉｇｎａｌ Ｐｒｏｃｅｓｓｉｎｇ Ｔｅｃｈｎｏｌｏｇｙはアナログ・デバイセズ社の商標、ｉＭＥＭＳは同社の登録商標です。
【 製品に関する読者からのお問い合わせ先 】
ホリゾンタル・セグメント・マーケティング・グループ
電話０３－５４０２－８１２８
＊参考画像あり。