NECなど、無線IPコアのデジタル化を推進するデジタル無線技術を開発
無線IPコアのデジタル化を推進するデジタル無線技術を開発
NECおよびNECエレクトロニクスはこのたび、無線機器の低コスト化・低消費電力化に不可欠な無線IPコアのデジタル化を更に一歩進める基本技術を開発しました。
本技術は、無線IPコアを搭載したLSIの微細化を今後も継続可能とし、システムLSIへの無線IPコアの混載を容易にするための基本技術です。同時に、無線IPコアを搭載したシステムLSIの低コスト化や低消費電力化に貢献し、無線技術を用いた次世代ユビキタスソリューションを実現するための基盤技術となります。
このたび開発した技術の特長は以下の通りです。
(1)位相・振幅の異なる複数のデジタル信号から、歪みの少ないRF信号を合成する技術を開発。本技術を無線IPコア(送信部)の変調回路とパワーアンプ回路に適用することで、歪み除去のためにLSI外部に設置する高価な部品が不要となり、低コスト化が可能に。また、デジタル信号の位相を調整することでRF信号の歪みを制御できるため、LSI製造後に性能を微調整でき、設計期間の短縮にも貢献。
(2)無線IPコア(受信部)で受信したRF信号をサンプリングし、そのデータの比較により受信信号を直接データに復調する技術、および、無線信号の受信状態に合わせてサンプリング頻度を変える技術を開発。従来はデータの受信中は連続して受信回路を動作させていたが、通信状態に応じて受信回路の動作時間を短縮できるようになり、通信環境に応じて消費電力を低減可能(試作チップでは最大1桁近くの電力低減)。
近年、半導体製造プロセスの微細化に伴うトランジスタのノイズ低減と動作速度の高速化により、無線回路のデジタル化が進んでいます。しかし、無線機能を搭載した機器を今後さらに普及させるためには、CMOS微細化で顕在化する素子特性バラつきによって生じるRF信号の劣化の抑制や、より一層の消費電力の低減を進めることが求められています。
今回開発したデジタルRF技術は、離散時間処理の導入に加え、デジタル信号からのRF信号の直接合成や、離散時間の処理頻度のデジタル制御により、従来より一歩進んだデジタルRF回路を実現する技術です。本技術により、無線IPコアを搭載したLSIの微細化の継続、システムLSIへの無線IPコアの混載の容易化、製造後の性能の微調整の容易化、LSI外部の部品点数の削減、きめ細かい電力削減など、新しい価値を顧客に提供できるようになります。
NECおよびNECエレクトロニクスは、今回の成果が、誰でも手軽に利用できるユビキタスネットワーク社会の発展に貢献するものと考え、今後、一層の低コスト化・低消費電力化を実現する無線IPコアの研究開発を加速していきます。
なお、NECは本技術をZigbeeやBluetoohなどに代表されるISM帯(注)の無線IPコアに適用した成果を、6月14日から16日まで、リーガロイヤルホテル京都(京都府・京都市)で開催される学会「VLSIシンポジウム(2007 Symposium on VLSI Circuits)」で、14日に発表します。
添付資料:ISM帯無線IPコアのチップ写真
以上
(注)ISM(Industrial Scientific and Medical)帯
産業・科学技術・医療への応用において、一定強度以下の微弱な電波での無線通信に限り、規制当局の許可を必要とせず使用が認められている帯域を指します。特に2.4~2.5GHzの周波数帯は、日米欧の法規制の下で開放されています。
【 本件に関するお客様からのお問い合わせ先 】
NEC 研究企画部 企画戦略グループ
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