JFEスチール、自動車用高張力薄鋼板の難成形部品への適用を拡大するプレス加工技術「JIM-Form」を開発
高張力薄鋼板の成形限界を拡大する新プレス加工技術 『JIM-Form』を開発
~材料・加工技術を総合し、自動車の軽量化および衝突安全性向上に貢献~
当社は、このたび、自動車用高張力薄鋼板の難成形部品への適用を拡大するための新プレス加工技術(JFE Intelligent Multi-stage Forming with Press Motion Control、略称:JIM-Form(注1))を開発し、実用化に向けた部品試作研究開発を開始いたしました。『JIM-Form』は、高張力薄鋼板の成形限界を拡大するプレス加工技術で、成形過程での被加工材と金型間の摺動挙動を適正化することで、過大なプレス荷重がかからないように成形時のストローク位置を制御しながら加工することが特徴です。『JIM-Form』の適用により、これまで780MPa級の材料でしかプレス加工できなかった難成形部品にも980MPa級の材料が使用出来る可能性が広がり、自動車の更なる軽量化と衝突安全性の向上が期待できます(注2)。
高張力薄鋼板は、自動車の軽量化ならびに衝突安全性の確保、向上の観点から使用拡大が期待されていますが、一般に高強度になると成形性が低下する傾向があるため、材料開発のみならず成形加工技術の開発も重要な課題となっています。そこで、当社スチール研究所では、発足以来加工技術の開発を行うと同時に、材料・加工技術の総合力を発揮し、自動車の設計段階からお客様と技術的に協力し合うEVI活動(Early Vendor Involvement)を積極的に展開してきました。その拠点として、昨年8月、業界初のカスタマーズ・ソリューション・ラボ(CSL)をスチール研究所(千葉地区)に開設いたしました。『JIM-Form』の実用化にはサーボプレス機の機能を十分に活用することが必要なため、スチール研究所(千葉地区)に、3000kNクラスのサーボプレス機(アイダエンジニアリング(株)製)を導入し、研究を行っています。『JIM-Form』の実用化に向けた研究は、EVI活動の深化の一事例です。
『JIM-Form』の特長は、以下の通りです。
(1) 高張力鋼板のプレス成形性を大幅に向上させることが可能であり、成形性の観点から従来適用が困難であった自動車用部品への高張力鋼板の適用拡大が可能
(2) 一般の軟質鋼板(TSグレード270MPa級)などを使用する深絞り部品への適用も可能であり、成形性向上による部品設計自由度の拡大やプレス成形品の安定生産に寄与
(3) プレス機のスライド動作を自由に制御可能なサーボプレス機とダイクッションシステムの組み合わせにより『JIM-Form』の自動化が可能であり、従来のプレス加工方法に比べ生産性を大きく損なうことなく自動車部品などの量産技術への適用が比較的容易に実現
当社は、今後もお客様とのEVI活動を更に深め、当社の材料・加工技術を総合的に提供することを通じて社会に貢献してまいります。
(注1) JFE Intelligent Multi-stage Forming with Press Motion Control、JIM-Form:
従来のプレス成形では、プレス機のスライドに設置された上金型が下降し、上金型が被加工材に接触して加工が開始されると、加工が完了する(成形ストローク下死点)までの間、金型と被加工材は常に接触した状態にありました。このような従来の発想とは異なり、『JIM-Form』では、成形の途中で積極的に金型と被加工材を離し、その瞬間に金型と材料の表面間に潤滑油を再流入させます。これにより、摺動性が改善して成形荷重が低減するため、プレス成形性が向上します。
(注2) 『JIM-Form』を適用することで、同じしわ押さえ力を負荷した状態でも最大成形 荷重を従来に比べ低減する事が可能となり、その分材料の成形限界を拡大できることを780MPa級高張力鋼板を用いた小型深絞り基礎試験で確認しています(平成17年度 塑性加工春季講演会 講演論文集 p.265~266:日本塑性加工学会)。