富士写真フイルム、「非標識医薬品化合物スクリーニングシステム」を開発
医薬品開発に必要な化合物の探索を画期的な技術で支援する「非標識医薬品化合物スクリーニングシステム」を開発
世界最速のSPR法スクリーニングを実現
富士写真フイルム株式会社(社長:古森 重隆)は、表面プラズモン共鳴(SPR)技術※1 を基盤とした、世界最速のSPR法※2 「非標識医薬品化合物スクリーニングシステム」※3 を、武田薬品工業株式会社(社長:長谷川 閑史)と共同研究を進め、このたび開発いたしました。平成19年春を目途に、創薬スクリーニング※4 現場で求められている、従来の手法では測定が難しかった化合物のスクリーニングを高速(約4000化合物測定/日)かつ低ランニングコストで実現するシステムの製品化を目指します。
※1 表面プラズモン共鳴(SPR)技術:
Surface Plasmon Resonance技術。金膜表面に生じるプラズモン(金属中の自由電子が集団的に振動すること)の光吸収パターンを調べ、金膜に接する物質の屈折率を検出する技術。病気の原因となるタンパク質を金膜上に固定し、そこにさまざまな化合物を流すと、薬効の可能性のある化合物はタンパク質に結合し金膜上に質量変化をもたらす。屈折率は質量(密度)に比例し、屈折率変化は光吸収のパターン変化として現れるので、これをCCDで観察することにより創薬対象となる化合物候補を探索することができる。
※2 平成18年9月時点当社調べ SPR法による非標識スクリーニングにおいて。
※3 非標識医薬品化合物スクリーニング:
病気の原因となるタンパク質、あるいは化合物に、蛍光材料などの標識を付けることなく、タンパク質と化合物との相互作用を測定する手法。蛍光材料などの標識を付けて測定する手法は、蛍光法と呼ばれている。
※4 創薬スクリーニング:
創薬(医薬品開発)を目的として、標的とするタンパク質に結合する候補化合物を探索する作業。
大量の化合物ライブラリーの中から創薬の候補となる化合物を短期間で探索することが求められる創薬スクリーニングにおいては、従来、蛍光法など標識法スクリーニングでの測定が中心でしたが、蛍光材料などの標識との結合力が低い化合物の測定が難しいという課題がありました。また、標識を使わずに化合物との結合を測定することが可能なSPR法は、検査ごとの装置の洗浄や測定光学系の調整が必要で、手間と時間がかかり創薬スクリーニングの手法としては使われていませんでした。
富士フイルムの「非標識医薬品化合物スクリーニングシステム」は、SPR技術を基盤に、当社の持つ精密なプラスチック成形技術を用いてディスポーザブルタイプの測定系一体型センサーチップを開発したことで、従来の手間が簡素化でき測定時間を大幅に短縮できます。蛍光法などの標識法では測定が難しかった化合物の測定を、SPR法として世界最速の約4000化合物測定/日という処理スピードで実現します。また、ディスポーザブルタイプの測定系一体型センサーチップとしたことで、容易なメンテナンス性とコンタミネーションフリーも実現しています。
さらに、貴重なタンパク質および化合物ライブラリーの使用量を低減するため、化合物測定に最適化した独自の微量サンプル送液・測定技術を開発したことで、少ない化合物サンプルからの測定が可能となり、ハイスループットの特長と併せて低いランニングコストを実現します。
今回、富士フイルムの光学技術および材料技術と、武田薬品の創薬スクリーニング技術といった知見・ノウハウを融合させた本技術を用い、病気に関わるタンパク質に対して、薬の候補となる化合物群のスクリーニングを実施し、タンパク質に特異的に結合する化合物を測定することに成功しました。また、非常に測定が困難な分子量の小さい化合物群を対象としたフラグメントアッセイ※5 にも成功しています。
※5 フラグメントアッセイ:
分子量150~300の比較的小さいサイズの化合物群から、タンパク質に結合する候補化合物を探索する方法。候補化合物の構造情報をもとにして、薬剤を合成・設計する。
近年、新薬の開発においては、期間の短縮や投資削減のため、病気に関わるタンパク質の構造情報に基づいた合理的な薬の設計手法(SBDD手法:Structure-Based Drug Design)が注目されています。今回開発した技術は、タンパク質と化合物の結合を高速で測定可能にするものであり、SBDD手法の発展にも大きく寄与するものです。
この開発成果は、9月17日から米国シアトルで開催される、The Society for Biomolecular Sciences 12th Annual Conference & Exhibitionで発表いたします。
富士フイルムは、平成19年春の発売を目指し本システムの製品化を進めるとともに、今後も医薬品開発に重要なタンパク質研究において、独自技術・事業を進化させ、強力に推進していくことで、医療、ひいてはライフサイエンスの進歩に大きく貢献してまいります。
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