帝国データバンク、7月の全国企業倒産集計を発表
2006年7月報
全国企業倒産
倒産件数は746件、前年同月比10.5%の増加
負債総額は3548億4000万円、今年2番目の低水準
倒産件数 746件
負債総額 3548億4000万円
前月比
件数 0.3%増 前月 744件
負債 7.4%減 前月 3832億700万円
前年同月比
件数 10.5%増 前年同月 675件
負債 15.0%減 前年同月 4174億2400万円
☆ポイント
■倒産件数は746件、前月比0.3%の増加、前年同月比も10.5%の増加。
■負債総額は3548億4000万円、前月(3832億700万円)を283億6700万円下回り、2月(3252億8300万円)に次いで今年2番目の低水準。
■規模別では、負債10億円以上の倒産が56件にとどまるなど、大型倒産は引き続き低水準。
■地域別では、四国(27件)、北陸(23件)など6地域で前年同月比増加。
【 件 数 】
2006年7月の倒産件数は746件で、前月(744件)を2件上回るとともに、前年同月(675件)も71件上回った。
前月比は+0.3%と微増だが、前年同月比では+10.5%を記録。
ここ数ヵ月、倒産は増加と減少を繰り返しているが、依然として倒産推移の上ぶれを招く種々のリスク要因の存在もあり、当面は一進一退を繰り返しながらも現在の緩やかな増加基調が続くものと推測される。
【 負債総額 】
2006年7月の負債総額は3548億4000万円で、前月(3832億700万円)を283億6700万円下回り、2月(3252億8300万円)に次いで今年2番目の低水準となった。
前月比(▲7.4%)、前年同月比(▲15.0%)ともに減少を記録。
負債10億円以上の倒産は56件(前年同月52件)、同50億円以上の倒産が9件(同13件)にとどまるなど、引き続き大型倒産は低水準で推移している。
【 業種別 】
5業種で前年同月上回る
業種別に見ると、7業種中、運輸・通信業(29件、前年同月比+52.6%)、サービス業(123件、同+44.7%)、卸売業(128件、同+30.6%)、小売業(122件、同+6.1%)、建設業(222件、同+4.7%)の5業種で前年同月を上回った。
一方、不動産業(22件、前年同月比▲31.3%)、製造業(90件、同▲13.5%)の2業種は前年同月を下回った。このうち、製造業は3ヵ月連続の100件割れとなり今年最低を記録した。
構成比で見ると、建設業が4月(28.9%)以来3ヵ月ぶりに30%を下回ったものの、依然として全体の約3割を占めている。
【 主因別 】
「不況型倒産」が依然として高水準
主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は566件(前月550件、前年同月478件)となり、前月を2.9%(16件)、前年同月を18.4%(88件)ともに上回った。
「不況型倒産」構成比は75.9%(前月73.9%、前年同月70.8%)となり、前月を2.0ポイント、前年同月を5.1ポイントともに上回った。
一方、放漫経営(52件、前月比+8.3%、前年同月比+40.5%)、その他の経営計画の失敗(22件、同+46.7%、同+46.7%)などの「好況型倒産」が依然として散発している。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
【 規模別 】
大型倒産は引き続き低水準で推移
負債額別に見ると、負債10億円以上の倒産は56件(前月50件、前年同月52件)、同50億円以上の倒産も9件(同11件、同13件)にとどまるなど、大型倒産は引き続き低水準で推移している。
負債5000万円未満(284件、前年同月比+10.5%)と、同5000万円以上1億円未満(126件、前年同月比▲5.3%)を合わせた負債1億円未満の中小・零細企業の倒産は410件(構成比55.0%)となり、全体の過半数を占めた。
資本金別に見ると、資本金1000万円以上5000万円未満(411件、前月比+6.2%、前年同月比+22.3%)、同1億円以上(14件、同+55.6%、同+7.7%)の規模で、前月、前年同月をともに上回った。
【 態様別 】
民事再生法4ヵ月ぶりの50件超え
態様別に見ると、破産は674件(前月684件、前年同月608件)で、前月比は1.5%(10件)の減少となったものの、前年同月比では10.9%(66件)の増加となった。構成比は90.3%で前年同月(90.1%)を0.2ポイント上回り、2ヵ月連続の90%台となった。
特別清算は21件(前月15件、前年同月24件)で、前月比は40.0%(6件)の増加となったものの、前年同月比では12.5%(3件)の減少となった。
民事再生法は51件(前月45件、前年同月41件)で、前月比は13.3%(6件)の増加、前年同月比も24.4%(10件)の増加となり、3月(62件)以来4ヵ月ぶりの50件超えとなった。構成比は6.8%で前月(6.0%)を0.8ポイント、前年同月(6.1%)を0.7ポイントともに上回った。
【 地域別 】
6地域で前年同月を上回る
地域別に見ると、北海道(28件、前年同月比+40.0%)、東北(51件、同+10.9%)、北陸(23件、同+130.0%)、近畿(178件、同+41.3%)、中国(32件、同+77.8%)、四国(27件、同+145.5%)の6地域は、前年同月を上回った。
このうち、四国では2005年4月以降で最高を記録した。
一方、関東(266件、前年同月比▲8.9%)、中部(87件、同▲3.3%)、九州(54件、同▲12.9%)の3地域で前年同月比減少となった。
構成比では、関東が35.7%となり、前年同月(43.3%)を7.6ポイント下回ったものの、依然として全体の3分の1以上を占めている。
☆今後の問題点
■国税庁が8月1日に発表した2006年分の路線価によると、全国平均が前年比0.9%増と14年ぶりに上昇した。東京は2年連続の上昇で、大阪、愛知、京都、千葉の4府県は今年になってプラスに転じたほか、地方の下げ幅も縮小傾向を見せるなど、地価回復が大都市から地方へ波及しつつある構図がうかがえる。バブル崩壊以降の景気低迷の元凶であった資産デフレが、ここへ来て解消の方向へ確実に向かっていることの意味は大きく、日本経済のファンダメンタルズは大きな転換点を迎えている。
■一方で、7月14日にゼロ金利が解除されたことで金利上昇のリスクが高まったほか、北朝鮮のミサイル発射問題やイスラエル・レバノン情勢の緊迫化などの地政学的リスクから原油高も進行し、原油先物相場(WTI、期近)は一時1バレル=78ドルを突破して最高値を更新した。そのほか、梅雨明けの遅れが消費者の出足を鈍らせ小売・サービス業者の商況を悪化させたほか、長雨・豪雨による自然災害が一部の地方経済に大きな傷跡を残した。
■こうしたなか、2006年7月の法的整理による倒産は746件となり、前月比で0.3%、前年同月比で10.5%それぞれ増加した。倒産件数の推移は一進一退を繰り返しているものの、長期的なスパンでとらえると緩やかな増加基調を維持している。負債総額は3548億4000万円で、今年2番目の低水準となり、大型倒産は引き続き低水準で推移している。7月は、ゴルフ場経営の(株)クリスタルリンクスゴルフクラブ(負債178億円、岡山県)などの大型倒産が発生しているが、負債100億円以上の倒産は7件にとどまったうえ、そのうち4件がバブル処理型のゴルフ場経営業者で占められるなど、産業界に大きなダメージを与えるようなメーカーや流通業者などの大型倒産は発生していない。
■個別企業を見ると、プリント基板製造のサンタ軽金属工業(株)(負債85億6700万円、長野県)が、金属などの素材価格高騰から資金繰りが急速に悪化して倒産したほか、貸切バス運送の(有)博多オリエント観光(負債1億7000万円、福岡県)が、燃料高騰から採算悪化を余儀なくされ破産に至るなど、最近の日本経済が抱えるリスクを反映した倒産が相次いでいる。7月は、原油高騰による倒産が6件、金属関連の価格高騰による倒産が2件、その他素材価格高騰関連の倒産が3件発生しており、最近の原油・素材価格高騰関連倒産は毎月一定の水準を維持している。
■今後の倒産動向については、こうした原油・素材価格高騰などの懸念材料が、どこまで倒産推移を上ぶれさせるのか不安視されるものの、当面は一進一退を繰り返しながらも現在の緩やかな増加基調が維持されると予想される。このほか、金利上昇による財務悪化、談合などに対する公正取引委員会の取り締まり強化、金融庁による相次ぐ処分の影響なども、倒産増加を誘発する要因として十分に警戒しなければならない。