住友化学、米RSL社とフルスペクトラム太陽電池の合弁会社を設立
太陽電池事業での合弁会社設立について
住友化学は、米国ローズ・ストリート・ラボ社(以下、RSL社)と、フルスペクトラム太陽電池の開発・製造・販売を目的とした合弁会社「RSLエナジー社」(以下、RSLE社)を、下記の通り設立することといたしました。
RSLE社は、RSL社が米国のバークレー研究所およびコーネル大学から既に得ている、従来品と比べ大幅に広範囲な光波長を活用できる半導体素子に関する特許の独占ライセンス権を引継ぎます。住友化学とRSL社は、今後合弁会社を通じ、それら特許をベースにした技術を活用し、3年後を目途に、次世代の高効率太陽電池の商業化を推進していく所存です。
バークレー研究所の開発した「マルチバンド技術」は、構造のシンプルさやコスト面ではシングルジャンクション素子レベルでありながら、発電効率はトリプルジャンクション素子と同等レベルの高さを実現しうる独特な技術で、本年9月には、毎年世界で最も優れた技術100件に与えられる「R&D100賞」(「R&D」誌選定)を受賞しました。また、これに加え、コーネル大学とバークレー研究所が共同開発した、マルチバンド技術同様広範囲な光波長の吸収を可能とする、化合物半導体(InGaN)を用いた「マルチジャンクション技術」を活用し、高効率太陽電池の早期商業化を目指していきます。
本技術の完成後は、太陽電池の発電効率を、現在主流のシリコン系に比べて約3倍の48%以上に向上できるものと期待しております。
住友化学は、化合物半導体事業で長年にわたり蓄積した幅広い技術を通じて、RSL社、コーネル大学、バークレー研究所と協力し、本技術の確立を早期に実現していく考えです。
記
1.会社名 RSL Energy,Inc.
2.設立 2006年11月初旬予定
3.所在地 米国アリゾナ州フェニックス市
4.資本金 当初6.6百万米ドル
5.出資比率 住友化学50%:RSL社50%
6.製造 住友化学の関係会社Sumika Electronic Materials, Inc.が、RSLE社の主要原料(化合物半導体等)および製品を製造する第一優先権を有する。
7.販売 住友化学は、RSLE社の製品を日本およびその他アジア諸国で販売する第一優先権を有する。
以上
【ご参考】
ローズ・ストリート・ラボ社(RSL社)の概要
会社名: Rose Street Laboratories, LLC
本社所在地: 米国アリゾナ州フェニックス市
設立年: 2003年10月1日
CEO : Bob Forcier
従業員: 260名
売上高: 40億円
【用語解説】
・フルスペクトラム太陽電池
太陽光(短波長~長波長)を万遍なく吸収し、電力を発生する太陽電池。
・マルチバンド技術
半導体には固有の吸収帯があり、ある一定領域の波長の光しか吸収できない。一方、今回開発されたマルチバンド技術を利用すると、ひとつの半導体で、あたかも複数の半導体が積層されたかのように広範囲の太陽光を効率的に吸収することが可能となり、結果として効率的に電力を発生することができる。
・シングルジャンクション素子
太陽電池はp型およびn型半導体を接合(ジャンクション)させてダイオードとして機能している。シングルとはこの接合が一つ(単層)であるという意味。
・トリプルジャンクション素子
ダイオードが3層積み重なっている素子。ダイオード1層あたり一つの接合があるため、トリプルと呼称する。
・マルチジャンクション技術
p型およびn型半導体を接合させてダイオードとするが、これを複数にわたって接合させる技術。3層の場合は上記のようにトリプルジャンクションと呼称。