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2024'11.27.Wed
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2007'04.19.Thu

理化学研究所、ガン化と関連した異常なDNA組換えを抑えるタンパク質のSUMO化を発見

がん化の一大要因“DNA異常構造の蓄積”を抑制する仕組み発見
- 新たながん治療ターゲットとしてタンパク質の「SUMO化」の重要性高まる -


◇ポイント◇
 ●がん化と関連する異常な染色体組換えを抑える「SUMO修飾経路」を酵母系で発見
 ●DNA複製傷害時にSUMO化でDNA異常構造の蓄積を抑制
 ●がん化症状を示す遺伝病(ブルーム症候群)の原因遺伝子もDNA異常構造を抑制

 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)とイタリアがん分子生物研究基金は、国立大学法人東北大学と共同で、タンパク質の「SUMO(small ubiquitin-like modifier)化」が、がん化と関連する異常なDNA組換えを抑える働きをすることを発見しました。本研究は、イタリアがん分子生物研究基金のBranzei Dana(ブランゼイ・ダーナ)博士(元理研中央研究所(茅幸二所長)太田遺伝システム制御研究室 基礎科学特別研究員)、Marco Foiani(マルコ・フォイアーニ)教授、および東北大学大学院薬学研究科(竹内英夫研究科長)の榎本武美教授、関政幸助教授らと、太田邦史准主任研究員(理研中央研究所 太田遺伝システム制御研究室)による国際共同研究の成果です。
 タンパク質はリン酸化などの化学修飾によって機能が制御されますが、その中でユビキチン※1やその類縁因子SUMO等のペプチド性小分子による修飾が最近重要視されています。ユビキチン化はタンパク質分解を促進していますが、その反応と拮抗するSUMO化の生物機能については、まだ良く判っていません。一方、がん細胞では染色体転座※2等の異常な組換えが頻発することが知られています。一例としては、DNA組換えの制御に関わる酵素を遺伝的に欠損するブルーム症候群※3の患者で、高頻度の異常な染色体組換えと共に、がんの頻発などの症状が見られます。
 本研究では、出芽酵母をモデルに、SUMO結合酵素“Ubc9”と、SMCタンパク質※4の一員Smc5-6に結合する因子として知られるSUMO連結酵素“Mms21”によるSUMO化が、DNA傷害を持つ複製フォーク※5において、染色体異常や遺伝子変異につながる異常なDNA組換え中間体(X型構造)の蓄積を抑える働きがあることを明らかにしました。この経路はこれまで知られていたDNA複製時の細胞周期監視(複製チェックポイント)経路とは別立てのものであり、またブルーム症候群の原因遺伝子産物の酵母相同タンパク質”Sgs1”が同様な経路と協力して異常なDNA組換えの抑制を行っていることも示唆されました。このためこの成果は、がん化のメカニズム解明に重要な示唆を与えると共に、がん治療のための新たな創薬標的としてSUMO修飾関連酵素やその標的因子が重要であることを示しました。
 本研究成果は、米国の科学雑誌『Cell 』(11月3日号)に掲載されます。


1.背 景
 多くのタンパク質はリン酸化やアセチル化、メチル化などの化学修飾を受け、性質を変えるという機能の制御が行われます。近年、これらの化学修飾とは異なる、小分子ペプチドによるタンパク質の修飾が疾病との関わりから注目されています。たとえば、タンパク質のユビキチン化反応が異常になると、パーキンソン病などの疾病が引き起こされると考えられています。今回研究対象としたSUMO(small ubiquitin-like modifierの略)は、ユビキチンに類似した別の小さなタンパク質で、ユビキチンと同様にタンパク質分子にイソペプチド結合により共有結合します(図1)。このSUMO化されたタンパク質は、立体構造の変化や核内への移行を通じ、遺伝子発現の制御や染色体構造の変化に関わるとされています。また、多くの悪性がんで異常が見られるがん抑制遺伝子であるp53もSUMO化を受けるタンパク質です。p53はゲノムDNAの損傷に際して、細胞周期を調節したり、細胞死を誘導したりしてゲノムの異常化を防ぐ機能があると考えられています。しかしながら、SUMO化の生理的機能については、依然として未知の点が多いのが現状です。
 また、がん細胞の特質の一つとして、高頻度にゲノムDNAが異常をきたし、染色体の転座等で不安定性が増大することが知られています(図2)。人の遺伝病であるブルーム症候群では、このような染色体不安定性と共に、悪性腫瘍やがんの発生頻度が高くなることが知られています。これらの染色体不安定性は、DNA複製フォークに損傷が生じた際に出現すると考えられている特殊なDNA構造が、異常なDNA組換えを誘発するためと考えられています。ブルーム症候群やウェルナー症候群※6の原因遺伝子は、このような特殊なDNA構造の解消に関与することが推測されていますが、その過程がどのように制御されているかについては、良くわかっていませんでした。
 研究では、DNAの損傷存在下におけるDNA複製の際に、SUMO化がどのような役割を果たすかについて調べました。 


2.研究の手法
 SUMO化に異常のある種々の出芽酵母変異体(ubc9, siz1, siz2, mms21など)や、相同組換え酵素の欠損株(rad51)、およびブルーム症候群原因遺伝子の酵母ホモログの欠損株(sgs1)などを用い、DNAアルキル化剤メチルメタンスルホン酸(MMS)処理を行ってDNAを傷つけた後、DNA複製起点周辺のDNA構造を二次元電気泳動で詳しく解析しました。特に、組換えを誘発する特殊なDNA中間体構造(X型構造)の形成に着目しました。


3.研究成果
 解析の結果、ubc9(E2 SUMO結合酵素※7)変異株では、MMS存在下(DNA損傷時)に、Rad51(相同組換え酵素)に依存してX型DNA中間構造が染色体上に顕著に蓄積することを見出しました(図3)。このX構造の蓄積は、ブルーム症候群原因遺伝子の酵母ホモログSGS1の変異株でも同様に見出されましたが、SUMO化を受けることが知られているPCNAというタンパク質のSUMO化が特異的に欠損する株では出現しませんでした。また、E3、SUMO連結酵素であるsiz1、siz2、mms21の変異体を用いてX型構造の蓄積の有無を調べたところ、mms21変異株のみでX型構造が強く現れることがわかりました(図4)。Mms21タンパク質はSMC(Structural Maintenance of Chromosomes)複合体という染色体タンパク質の一種Smc5-6に付随するSUMO連結酵素で、複合体としてDNA修復やDNA組換え抑制のプロセスに関わっていることが知られていました。しかし、今回傷害を持つDNAが合成される際にubc9と変異株と同じ経路でX型構造の蓄積を抑制し、異常なDNA組換えを防ぐ働きがあることがわかりました。なお、この調節経路はDNA複製チェックポイントとは別の新しい経路であると考えられます(図5)。


4.今後の展開
 がん細胞で異常なDNA組換えが続く原因として、SUMO化によるX型DNA中間体の蓄積阻止が破綻している可能性が考えられました。このことから、がん細胞で特異的に見られるSUMO化を分析することで、がんの診断や新たな治療法が将来開発される可能性があります。また、抗がん剤として知られるシスプラチンなどはDNAに損傷を与えることで、がん細胞の増殖を抑制したり、細胞死を誘導したりしますが、一方でもしSUMO化が破綻している腫瘍などにこの治療を行うと、効果がなかったり、さらにがんが悪性化したりする可能性もあります。このようなケースについては、事前に患者のSUMO化レベルを調べることで、より適切な「個の医療」を行うことができることが期待されます。

 Branzei Dana博士はルーマニア出身で、東北大学大学院薬学研究科博士課程を修了後、理研中央研究所 太田遺伝システム制御研究室に基礎科学特別研究員として所属して本研究の一部を実施した後、イタリアがん分子生物基金 Foiani研究室の研究員として本研究を完成させました。現在同博士は、独立研究者としての道を歩んでいます。なお、本研究は主として文部科学省・科学研究費補助金・特定領域研究の助成のもとに実施されました。

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