日立電線、超極細銅合金線を用いた超極細同軸ケーブルの製造技術を確立
超極細銅合金線およびこの銅合金線を用いた
超極細同軸ケーブルの製造技術を確立
日立電線株式会社はこのたび、高導電特性と高強度特性を両立する直径13マイクロメートルの超極細銅合金線を開発し、この銅合金線を導体として用いた超極細同軸ケーブルの製造技術を確立いたしましたのでお知らせします。
極細同軸ケーブルは、導体数本をより合わせた内部導体、絶縁体、外部導体、ジャケットから構成された電線で、耐屈曲性や省スペース性、信号の高速伝送性、耐ノイズ性に優れ、ノートPC、携帯電話等の電子機器の内部配線や、超音波診断装置用プローブケーブル等さまざまな製品に使用されております。
これら製品の小型化、高性能化に伴い、極細同軸ケーブルにはさらなる細径化が求められています。
極細同軸ケーブルの細径化には、構成部材である導体の細径化や絶縁体、ジャケットの薄肉化が必要となります。一方で導体を細くすると電気抵抗が増加するために、導体の材料自体に高い導電性と繰り返しの曲げやねじりに耐えられる高強度特性が求められます。
日立電線グループでは、従来から極細同軸ケーブルについて、導体の細径化に対応する銅合金の開発から、その鋳造、伸線、ケーブル化までを一貫して手掛けております。すでに、純銅に比べ強度を向上させた銅-錫系合金(NN合金)を使用した直径16マイクロメートルの銅合金線を実用化し、これを内部導体として用いた46AWG(*1)サイズ(直径0.048mm)の極細同軸ケーブルを業界に先駆けて製品化しています。
このたび当社グループでは、極細同軸ケーブルのさらなる細径化ニーズに対応するため、導体の材料に新たに開発をした銅-銀系合金(S-MF-AG合金)を使用し、鋳造技術と伸線加工技術、金属の結晶組織制御と加工・熱処理技術等の改善を行うことで、従来のNN合金線よりも導電性と強度に優れた直径13マイクロメートルの超極細銅合金線を開発するとともに、その量産技術を確立しました。(【導体の外観】参照)
さらに、これを内部導体として使用し、絶縁体とジャケットの超薄肉押出技術を改善することで48AWGサイズ(直径0.039mm)の超極細同軸ケーブルの製造技術を確立しました。(【極細同軸ケーブルの断面】参照)
当社グループでは、この48AWGサイズの超極細同軸ケーブルを医療現場で使用される超音波診断装置用プローブケーブル向けに適用し、販売してまいります。
プローブケーブルとは信号線である多数の極細同軸ケーブルから構成されたものです。(【医療用プローブケーブルの外観および断面】参照)超音波診断装置の高性能化により、信号線の数が増加しケーブルの外径は太くなる傾向にある一方で、患者の体内への挿入用途の増加や操作性向上のために細径化が求められています。
内視鏡用プローブケーブルにこの48AWGサイズの超極細同軸ケーブルを使用すれば、体内に挿入する際の患者の負担を大幅に低減することが可能となります。例えば、極細同軸ケーブルを60本使用する場合では、従来の46AWGサイズの極細同軸ケーブルを使用したものと比較して外径を約30%低減できます。
当社グループでは、優れた電気的、機械的特性を有する超極細同軸ケーブルを使用したプローブケーブルが、今後ますます発展する医療機器と低侵襲医療技術に大きく貢献することを期待しております。また、このたび製造技術を確立した、超極細合金線および超極細同軸ケーブルのさまざまなアプリケーションへの適用を検討してまいります。
極細同軸ケーブルの需要はノートPC、携帯電話等の内部配線および医療用プローブケーブル用途向けに2006年度に比べ2008年度には約50%伸長する見込みです。当社グループでは、48AWGサイズの極細同軸ケーブル等をラインアップに加え、極細同軸ケーブルの売上高を、2006年度見通し約40億円から2008年度には約100億円に増加することを目指してまいります。
以上
(*1) AWG(American Wire Gauge)とは、導体サイズを表す番手で、数字が大きくなるほど導体直径は小さくなります。
■ 以下、関連資料「別紙」参照
・導体の特性
・導体の外観
・極細同軸ケーブルの断面
・医療用プローブケーブルの外観および断面