グラクソ、糖尿病治療薬「ロシグリタゾン」が単独療法無効のリスクを軽減と発表
糖尿病治療薬のマレイン酸ロシグリタゾン、
2型糖尿病における長期的な血糖値のコントロールにおいて
メトホルミンもしくはSU薬に比べ高い効果を示す
ロシグリタゾンが投与開始5年時の単独療法無効のリスクを軽減
グラクソ・スミスクラインplc(GSK、本社:ロンドン)は、ADOPT(A Diabetes Outcome Progression Trial)と名付けられた大規模臨床試験において、同社の糖尿病治療薬である「アバンディア」(一般名:マレイン酸ロシグリタゾン)が治療開始5年の時点における経口糖尿病薬の単独療法無効のリスクを、メトホルミンと比較して32%(p<0.001)、またグリブリド(スルホニル尿素薬:SU薬、日本における一般名:グリベンクラミド)と比較して63%(p<0.001)軽減できたと発表しました。この国際的な大規模臨床試験は、新たに2型糖尿病と診断された4,360人を対象に行われたもので、この試験結果は、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン誌と国際糖尿病連合(IDF)の第19回世界糖尿病学会で発表されました。(1)
試験において空腹時血糖値(FPG)と糖化ヘモグロビン(HbA1c)を測定したところ、ロシグリタゾンはメトホルミンやグリブリドと比べて、血糖値のコントロールが進行的に低下するのを有意に遅らせることができました。1 血糖値のコントロールが悪化する主な原因は、インスリン抵抗性の増悪と膵臓のβ細胞機能の低下があげられます。(2)このADOPTではロシグリタゾンがインスリンへの感受性を顕著に改善し(p<0.001 vsメトホルミンもしくはグリブリド)、また膵β細胞機能の低下を有意に防ぐ(p=0.02 vsメトホルミン: p<0.001 vsグリブリド)ことが示されています。(1)
スティーブン・カーン教授(VA Puget Sound Health Care System and University of Washington School of Medicine,US)およびジャンカルロ・ヴィベティ教授(King’s College London School of Medicine,UK)は次のように述べています。
「このADOPTは、2型糖尿病管理におけるロシグリタゾンによる初期段階での治療効果についてのエビデンスが示されています。これは、ロシグリタゾンが糖尿病治療において汎用されているメトホルミンとグリブリドよりも、血糖コントロールの進行的な悪化を遅らせ、ターゲットとなる血糖値を長期に維持することを証明した初めての試験です。 血糖値に対するロシグリタゾンの長期的な効果は、糖尿病の主な病因であるインスリン抵抗性や膵β細胞機能低下などをより顕著に改善することにつながります。」
ADOPTの結果は、英国で行われた糖尿病に対する大規模臨床試験であるUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)から得られた結果に新たな知見を加えるものとなります。UKPDSは 1998年に発表されましたが、本試験はチアゾリジン誘導体(TZDs)の登場以前に開始されたものであり、ADOPTで用いられた3種類の経口糖尿病薬のうち、メトホルミンとSU薬の2種類しか含まれていませんでした。(3-5)
FPGを140 mg/dL (>7.8 mmol/L)から180 mg/dL (>10 mmol/L)の間に保つことが現在の一般的な治療の目安として用いられていますが1,6,7、ロシグリタゾンによる初期の治療は、血糖コントロールが徐々に悪化しFPG180 mg/dL (>10 mmol/L)を越えるまでの期間をメトホルミンあるいはグリブリドと比較し遅らせることができました。HbA1cの平均値が7.0%未満で推移する期間は、ロシグリタゾン群60ヶ月、メトホルミン群45ヶ月、グリブリド群33ヶ月であり、ロシグリタゾン投与群でより長期的な血糖値コントロールが示されました(1)。
グラクソ・スミスクラインの循環器・代謝性疾患領域医薬開発センター(Cardiovascular and Metabolic Medicine Development Centre)のシニア・バイス・プレジデントであるローソン・マッカートニー博士は以下の通り述べています。
「このADOPTという国際的な大規模臨床試験の結果から、2型糖尿病治療での血糖コントロールの維持においてロシグリタゾンによる初期治療が、従来の治療法に比べより効果的であるという明確なエビデンスが得られました。ADOPTは、長期の血糖コントロールという患者さんのベネフィットを明確に示すことにより、本年これまでに得られた2型糖尿病治療の基本薬としてロシグリタゾンを位置づけるためのエビデンスとして加えられることになります。」
最高6年間まで追跡調査を行なった2型糖尿病患者の大規模集団においてロシグリタゾンの忍容性は一般的に良いと報告されました。治療の中止に関しては、ロシグリタゾン投与群とメトホルミン投与群との間で著しい差はなかったものの、グリブリド投与群ではより高い中止率が認められました(グリブリド投与群44%、メトホルミン投与群38%、ロシグリタゾン投与群37%)。この差は、グリブリド投与群において低血糖による治療の中止が高かったことが主な原因でした。
うっ血性心不全の重篤な副作用が、ロシグリタゾン投与群(0.8%)およびメトホルミン投与群(0.8%)において同数(各12例)報告されましたが、グリブリド投与群では低い発現率でした(0.2%、3例)。
5年間に渡る臨床試験で報告のあった主な副作用は、各投与群で浮腫(ロシグリタゾン14.1%、グリブリド8.5%、メトホルミン7.2%)、体重増加(ロシグリタゾン6.9%、グリブリド3.3%、メトホルミン1.2%)、消化器症状(メトホルミン38.3%、ロシグリタゾン23.0%、グリブリド21.9 %)、低血糖(グリブリド38.7%、メトホルミン11.6%、ロシグリタゾン9.8%)でした(1)。
NEJM誌における発表に加え、最近行なわれたさらなる分析で、ロシグリタゾンを投与された女性よりもグリブリドあるいはメトホルミンを投与された女性の方が副作用として骨折、主に足と上肢骨の比率が低いことが示されました(グリブリド3.5%;メトホルミン5.1%;ロシグリタゾン9.3%)1。男性において報告された骨折の数では、投与群間の顕著な差異は認められませんでした。これらの骨折率は、糖尿病女性患者を対象とした観察研究の文献に基づいたレビューや大規模なマネージド・ケア・データベース解析で見られる頻度の範囲内です8-11。このエビデンスは、高齢の2型糖尿病女性患者では骨折のリスクが高いことを示しています(8-11)。
*参考資料などは、添付資料をご参照ください。