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2024'05.19.Sun
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2007'06.11.Mon

理化学研究所、自閉症に関連する遺伝子異常を発見など研究成果を発表

自閉症に関連する遺伝子異常を発見
-自閉症の病因解明や早期診断に向けた新知見-  


◇ポイント◇ 

・神経栄養因子の分泌を調節する遺伝子を欠損したマウスは自閉症に似た症状を示す 
・マウスで見つけたこの遺伝子の発現が自閉症患者で異常をきたしていることを発見 
・自閉症の発症原因の解明や早期診断につながると期待 

 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、神経細胞の生存と分化に重要な神経栄養因子※1の分泌を調節する遺伝子の発現異常と、自閉症との関連を世界で初めて明らかにしました。理研脳科学総合研究センター(甘利俊一センター長)分子神経形成研究チームの古市貞一チームリーダー、定方哲史研究員ら、および東京都立梅ヶ丘病院による共同研究グループの成果です。
 「自閉症」は、“対人関係の障害”や“言語等によるコミュニケーションの障害”、“活動や興味の範囲が狭くなり、常に同じ行動を繰り返す”といった特徴を持つ精神疾患の一つです。人口千人当たり一人以上の割合で発症し、改善はあっても完治しないことから家族への負担が大きく、社会的に深刻な問題となっています。しかしながら、その発症メカニズムはわかっていません。
 研究チームでは、分泌関連分子であるCADPS2(キャドプスツー)遺伝子(別名CAPS2(キャップスツー)遺伝子)※2を欠損したマウスを作製し、解析したところ、神経栄養因子の一つで、神経回路形成や記憶・学習機能を調節する脳由来神経栄養因子(BDNF)※3の分泌が著しく減少していることを発見しました。このことは、CADPS2遺伝子がBDNF分泌において重要な働きをしていることを意味しています。このマウスの行動を詳しく調べると、自閉症に見られる特徴をもった行動異常を示すことがわかりました。さらに、自閉症患者の協力を得て、CADPS2遺伝子の発現パターンを健常者と比較すると、一部の患者ではCADPS2遺伝子から転写されるmRNAに、異常な「選択的スプライシング※4」が起きていることが明らかになりました。この異常なmRNAから翻訳される欠損型CADPS2タンパク質は、神経軸索へ輸送されないことも示されました。この結果は、欠損型CADPS2の発現によってBDNFの局所的分泌が異常になり、これが神経ネットワークの形成異常につながる可能性を示唆しています。また、自閉症患者のゲノムの一塩基多型※5解析から、CADPS2タンパク質のアミノ酸配列に変異があるケースも検出しました。
 今回明らかになったCADPS2遺伝子の発現異常と自閉症との関連性は、自閉症の発症メカニズム解明の糸口となります。また、CADPS2遺伝子の発現を調べることで自閉症の早期診断につながることも期待されます。本研究成果は、米国の基礎医学専門誌『Journal of Clinical Investigation』(4月号・3月22日オンライン)に掲載されます。 


1.背 景 

 「自閉症」は、三歳までに発病する精神疾患として知られ、“対人関係における障害”、“言語などによるコミュニケーションの障害”、“興味の限局(活動や興味の範囲が狭くなる)、反復的で常同的な行動(同じ行動を常に繰り返す)”を特徴とした疾患です。人口千人当たり一人以上の割合で発症する珍しくない病気ですが、その発症メカニズムはまだ分かっていません。最近では、脳の発達障害によって発症し、遺伝子の異常が関与すると考えられています。この病気は、改善はあっても完治しないため、家族への負担が大きく、社会的に深刻な問題となっています。また、早期からの治療的な教育や対処療法、および社会的なサポートなどによって、行動上の問題のある程度の改善が可能であり、早期診断技術の確立が求められています。
 一方、CADPS2は特定の分泌顆粒の開口放出に関与することがわかっていました。これまでに研究チームは、“CADPS2タンパク質の脳内における発現分布パターンが、BDNFと多くの領域で一致する”こと、“BDNFを含む分泌顆粒膜に結合して神経終末に豊富に存在する”こと、“人為的に培養神経細胞へ発現させたCADPS2は、BDNF分泌を促進する”ことなどを明らかにしてきました。BDNFは、記憶、学習などの高次機能に関わっているほか、神経ネットワークの形成に重要であることがわかっている神経栄養因子であり、最近では、神経疾患の一つであるレット障害※6において、このタンパク質の量に異常があることなどが明らかになっています。  


2.研究手法と成果 

(1)CADPS2遺伝子欠損マウスの作製 
 研究チームは、ES細胞を用いた相同性組換え法を用いて、CADPS2遺伝子が欠損したマウスを作製しました。この変異をホモで持つマウスは、CADPS2遺伝子をすべての細胞で欠損します。その結果、大脳、海馬、小脳でのBDNFの分泌能が低下することから、CADPS2は、BDNFの正常な分泌に必須であることが明らかになりました。このマウスでは、大脳皮質、海馬、小脳における特定の神経細胞の生存と分化が損なわれる表現型が観察され、外来性BDNFの投与でこの異常な表現型は元に回復することなどがわかりました。 
 
(2)自閉症様行動の解析法 
 作製した遺伝子欠損マウスの行動を複数のテストで詳しく解析しました。以下は、その中の代表的なテストです。 

・社会的相互作用テスト
 同じケージで飼育したことのない2匹の雄マウスをテスト箱に入れ、2匹のマウスの社会的相互作用(近づいてお互いに嗅ぎあったり、接触したりする行動)を評価しました。CADPS2遺伝子欠損マウスは、相互作用の頻度に有意な低下が見られました。 

・母性(哺乳)行動テスト
 母親マウスの自ら出産したマウスを哺乳・養育する行動を調べました。CADPS2遺伝子を欠損した母親マウスは、子育てを放棄する割合が高いことがわかりました。 

・自発運動解析
 マウスの水平運動量を、ケージ内に設置した赤外線ビームの遮断による検出で6日間測定しました。CADPS2遺伝子欠損マウスは、野生型マウスに比べて運動量が多いことから、多動の傾向があることがわかりました。 

・新奇環境への適応実験
 飼育ケージ内に新奇オブジェクト(物体)を設置した際のマウスの行動量の変化や、オブジェクトへの接触回数を測定しました。また、新奇迷路にマウスを入れた時の行動量の変化を評価しました。CADPS2遺伝子欠損マウスは、新奇性の強い環境下では行動量が有意に減少し、新奇オブジェクトに対する接触行動を避ける傾向があることから、新奇環境下での不安行動の亢進や適応性の低下が見られました。 
 
 これらのテスト結果を踏まえると、CADPS2遺伝子欠損マウスは、通常の環境下での視覚、嗅覚、聴覚の機能は正常ですが、社会性行動の異常、母性行動(子育ての能力)の低下、多動、新奇環境への適応力の低下が見られ、自閉症で見られるような行動異常を示すことが明らかになりました。また、このマウスは、空間認知記憶の低下やサーカディアン・リズム※7の異常なども見られました。  
 
(3)自閉症患者におけるCADPS2遺伝子の解析法 
 CADPS2遺伝子欠損マウスの解析から、実際に自閉症患者においても、CADPS2遺伝子に何らかの異常がある可能性が考えられました。そこで、自閉症患者の協力を得て、患者と健常者のCADPS2遺伝子(全28エキソン)の配列を解析しました。その結果、CADPS2遺伝子の塩基配列そのものに、自閉症患者特異的な一塩基多型があることが明らかになりました。
 また、ヒトの抹消血液中の好塩基球※8にはCADPS2のmRNAが発現していることから、患者と健常者の血中のRNAをCADPS2の特定のエキソンを含むかたちで増幅し、その生成物を比較解析しました。その結果、一部の患者ではCADPS2遺伝子の転写で3番目のエキソンのみがスキップする(抜け落ちる)異常な選択的スプライシングが起きていることがわかりました(図1)。  
 
(4)CADPS2結合タンパク質の解析法 
 研究チームでは、CADPS2遺伝子の転写で3番目のエキソンのみがスキップすることによりどんな変化が生じるか探るため、CADPS2のエキソン3配列から翻訳されるタンパク質領域と特異的に結合するタンパク質を酵母Two-Hybridスクリーニング※9によって探索しました。解析の結果、エキソン3は、神経軸索※10に沿った輸送に関与するp150Gluedというタンパク質との結合に重要であり、エキソン3がスキップしたCADPS2タンパク質は軸索終末部に輸送されないことが明らかになりました。CADPS2は軸索終末からのBDNFの分泌に関わることから、エキソン3欠損型のCADPS2を発現する特定の自閉症患者においては、BDNFが健常者と異なったパターンで分泌されるために、神経ネットワークの形成に異常をきたす可能性が示唆されました(図2)。  
 
(5)その他の知見 
 自閉症患者の脳では、最も顕著な異常が小脳組織で観察されることが知られています。研究チームは、関連した別の研究において、CADPS2遺伝子欠損マウスも自閉症患者に見られる特徴的な小脳の形態異常を示すことも明らかにしました(『Journal of Neuroscience』(2007年3月7日))。  


3.今後の期待 

 自閉症の分子レベルでの診断法は、現在のところ確立されていません。今回の研究成果から、CADPS2遺伝子の発現を調べることにより、早期での自閉症の診断が可能になると期待されます。このことは、根本的な治療法が無い現在、教育や対症的薬物治療などを早めに施すことができるため、自閉症が抱える社会的な問題の改善につながる可能性があります。また、将来的にBDNFの正常な分泌を促進するような薬剤を探索し、薬を開発するなど、自閉症の治療法の選択肢が増える可能性があります。 


<補足説明>

 ※添付資料を参照 

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