武田薬品とキャンバス、癌治療薬に関する共同事業化契約を締結
キャンバス社と武田薬品の癌治療薬に関する共同事業化契約締結について
本日、株式会社キャンバス(静岡県沼津市、以下「キャンバス社」)と武田薬品工業株式会社(大阪市、以下「武田薬品」)は、キャンバス社が創製、開発中の癌治療薬CBP501およびそのバックアップ化合物に関する共同事業化契約を締結しました。本契約により、武田薬品は、全世界を対象とした独占的開発・製造・販売権を取得することになります。ただし、米国においては両社が共同開発し、コ・プロモーションを行います。
CBP501は、癌細胞において細胞分裂の過程でDNAの損傷をチェック、修復を行うG2期チェックポイントを阻害することにより、癌細胞死を促進する作用を持っています。同チェックポイントを選択的に阻害する本剤は正常細胞に与える影響の少ない抗癌剤として、化学療法剤との併用により、癌細胞のDNA障害を促進させる効果が期待されています。現在、キャンバス社は、米国で本剤の第1相臨床試験を実施しています。
本契約に基づき、武田薬品はキャンバス社に契約一時金を支払うとともに、同社が新規発行する株式を購入します。武田薬品は、米国での開発費の一定割合分および米国以外における開発費全額、ならびにバックアップ化合物の研究費の一部を負担するとともに、開発の進捗に応じたマイルストーンと販売後の売上高に応じたロイヤルティを支払います。また、米国では、キャンバス社と武田薬品がコ・プロモーションを行い、米国における開発・販売費の負担割合に応じ、利益を両社で按分します。その他の契約条件については公表していません。
キャンバス社代表取締役社長 河邊拓己は、「G2期チェックポイント阻害のコンセプトが武田薬品に評価され、今回のCBP501等の共同事業化契約締結に至ったことを大変嬉しく思います。今後、武田薬品との共同事業によって、臨床開発のスピードと内容をさらに高めていきたいと考えています」と述べています。
武田薬品代表取締役社長 長谷川閑史は、「今回のキャンバス社との契約締結を大変嬉しく思います。
今後、キャンバス社とともに、鋭意臨床開発を進め、一日も早く本剤を患者さん・医療関係者にお届けするとともに、当社の重点領域の一つである癌領域を強化できるものと期待しています」と、述べています。
<G2期チェックポイント阻害剤について>
細胞周期とは、1つの細胞が2つに分裂する過程をいい、その1周期はG1期→S期(複製期)→G2期→M期(分裂期)で構成されています。G1期とG2期の終わりには、それぞれ「チェックポイント」が存在し、DNAに入った損傷を修復し、修復できない損傷がある場合には細胞を自死させています。
正常細胞では、DNAの正確な複製によって細胞の分裂が正常に行なわれるように、複製をおこなうS期の前に位置するG1期のチェックポイントが主力として活用されており、G2期チェックポイントは、正常細胞ではあまり使用されていません。
多くの癌細胞では、G1期チェックポイントが機能不全となっています。しかし癌細胞といえどもDNAにあまり多数の損傷が入ると生存できなくなることから、正常細胞ではあまり使用されないG2期チェックポイントが活性化され、細胞周期をコントロールしています。
DNAに損傷が加わった場合、正常細胞は主としてG1期チェックポイントが活性化し、癌細胞はG2期チェックポイントが活性化して、それぞれ一旦細胞周期を停止し、修復を試みます。
そのとき、G2期チェックポイントが阻害されていると、癌細胞ではチェックポイントが存在しない状態になります。その結果、DNAに加わった損傷を修復することが出来ず、癌細胞は細胞死を来たします。反面、正常細胞はメインのG1期チェックポイントがアクティブなため、影響が少ないと考えられます。
したがって、G2期チェックポイントの選択的阻害は、正常細胞に影響の少ない抗癌剤の創薬ターゲットとしてきわめて適切なものと考えられています。
詳しくは、 http://www.canbas.co.jp/j2-2.html をご覧願います。
<キャンバス社について>
キャンバス社は、名古屋市立大学と藤田保健衛生大学の3人のサイエンティストのスピンオフをエンジェル投資家やベンチャーキャピタリストが支援して2000年に設立された、創薬バイオベンチャーです。キャンバス社のコア・テクノロジーは、細胞周期G2チェックポイントを標的とした薬剤開発と、G2チェックポイントを選択的に阻害する薬剤候補化合物を探索するスクリーニングシステムです。また、キャンバス社は、上記薬剤開発と並行して、最適の薬剤を決定し提供するための技術開発を進めています。詳細については、 http://www.canbas.co.jp/ をご覧ください。
以上