富士キメラ総研、微粉体製品の市場調査結果を発表
微粉体、ナノマテリアル市場の調査を実施
金属ナノ粒子市場は2007年以降に立ち上がり、2010年に170億円と予測
マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 表 良吉03-3664-5841)は、サブミクロン、ナノ、シングルナノなどサイズメリットを活かして多岐に渡る用途展開が進められている微粉体製品の市場を調査分析し、その将来を予測した。その結果を報告書「2007年 微粉体市場の現状と将来展望」にまとめた。
本報告書では、ファインセラミックス(原料粉末)、金属酸化物/金属、プラスチック、ナノマテリアル、及び、その他無機材料の5分野、47品目の微粉体市場を取り上げた。これらの微粉体は、各々のサイズ・素材ごとの特色を活かし、エレクトロニクス分野、ファインケミカル分野、化粧品・トイレタリー分野、自動車分野、産業機械分野などで、成型品の原料粉末として、またフィラーや添加剤、導電材料、プロセス材料などとして使用され、製品の高付加価値化に貢献している。
<注目市場>
金属ナノ粒子(世界市場) 2010年予測 170億円
金属ナノ粒子は「粒子の大きさが100nm以下の金属微粒子」と一般に定義されるが、ここでは「粒子径が10nm以下の金・銀・銅ナノ粒子」を対象とした。開発のメインは金、銀であったが、最近は銅ナノ粒子も注目されている。金属ナノ粒子は極小であることから、例えば金では粒子径が10nm以下になると融点が大きく低下するなど、元の金属とは異なる性質を示すといった特性を持っている。また、表面積が大きくなることで高活性となり、高い触媒作用を持つなど、様々な特徴が挙げられる。得られる金属ナノ粒子の表面には、出発物質に組み込んでおいた有機物もしくは有機物の一部が保護基として被覆しているため、金属ナノ粒子ペーストへの二次加工が容易になる特色を持つ。そのために金属ナノ粒子ペーストも安価な価格設定で市場に安定供給することが可能である。
金属ナノ粒子は、現状ではサンプル出荷がメインであり、市場は本格的には立ち上がっていない。一部で導電性ペースト、自動車用塗料など実用化が進んでいるが、2006年の市場は0.1トン、1億円規模と推定した。金、銀ナノ粒子は、電子デバイスの接合・配線材料などエレクトロニクス分野での使用が大半となる。ほかには、導電性ペースト、導電性インク、ACF(異方性導電フィルム)、センサー、光メモリ、液晶表示素子、ナノ磁石などの用途が挙げられる。他に想定される用途は、環境触媒、燃料電池用高機能触媒、医薬品、DDS(ドラッグデリバリーシステム)などである。また銀ナノ粒子を用いた自動車用塗料がホイール向けに展開される見通しである。従来の金、銀に加えて、銅粒子も注目されており、今後一層の進展が見込まれる。
ナノガラス(世界市場) 2010年予測 23億円
ナノガラスは、ナノメートルレベルで構造を制御し、従来のガラスを高機能化させたものである。ガラス中にイオン、分子、超微細結晶をハイブリッド化し分散させる、または電子線やレーザー、イオンビームを照射する、といった方法によりガラス内部や表面に超微細加工を施したもので、ナノテクノロジーを応用し、原子・分子レベル、または1nm~数10nmの単位でガラス構造を制御し、新規機能の発現・制御を可能としたニューマテリアルである。ガラスの持つ加工しやすさ、他の材料との相性の良さ等の特性から幅広い応用展開が可能であり、特に光メモリやディスプレイ、光通信などでの高付加価値化に貢献すると期待されている。
ナノガラスはガラスの応用材料であり、その用途はエレクトロニクス分野やエネルギー分野、環境分野などガラス材料の応用分野全般が想定される。例えば大型軽量ディスプレイ、高速通信用デバイス、大容量DVDデバイス、環境触媒用ガラスなどである。ナノガラスの商用ベースでの量産は行われておらず、現時点ではまだ市場は形成されていない。今後は、光分野や電気電子分野、機械、化学、生体分野など、ニューガラスにより形成されている市場の一部を置き換えることで市場が確立していくと予測される。
<調査結果の概要>
プラスチック粉や金属粉など数量ベースで拡大している市場は多いものの、汎用粉末も含めて捉えているため、市場全体の数量ベースでの伸びは小さい。しかし、金属酸化物、金属粉やプラスチック粉にみられる原料高騰による製品価格の上昇、ナノマテリアルや金属超微粉などの高付加価値品の増加などにより、金額ベースでは数量ベースの伸びを大幅に上回っている。
汎用品が大半で、数量ベースではその他無機材料分野が80%以上を占め、次いでファインセラミックス分野が15%となっている。他の分野は、高機能品が多いが規模としては小さい。金額ベースでは、金属酸化物/金属粉分野の伸びが高い。原料価格の高騰から、銅粉、はんだ粉、アルミニウム粉、タングステン粉などで製品価格が上昇し、また一部では高機能化による価格上昇もあり、市場は大きく増加している。
ファインセラミックス(7品目:国内市場)
2006年 667億円 2010年予測 779億円(伸長率117%)
アルミナやジルコニア、窒化ケイ素など主要ファインセラミックス7品目を取り上げた。数量ベースで約95%を占めるアルミナの動向が全体を左右する。金額ベースではアルミナのほかにチタン酸バリウム、ジルコニアのウエイトが高く、この3品目で約85%を占める。
アルミナは、60%以上(2006年)を汎用アルミナが占め、低ソーダアルミナが20%強(同)となっている。易焼結アルミナ、活性アルミナ、高純度アルミナ等の高機能品も徐々に増加している。メーカーの生産体制が高機能品にシフトしており、汎用アルミナのウエイトは低下している。一方、高機能品は概ね好調に推移しており、特に低ソーダアルミナ、高純度アルミナはLCD用部材向けを中心に需要が拡大している。ジルコニアは、自動車排ガス触媒用、酸素センサー、光ファイバーフェルール材料等向けが拡大している。チタン酸バリウム市場も、積層セラミックコンデンサ(誘電体層)向けが好調である。
金属酸化物(3品目)/金属(9品目:世界市場)
2006年 4,051億円 2010年予測 5,527億円(伸長率136%)
エレクトロニクス需要の拡大に伴い高成長している。特に高成長している市場は、ITOターゲット材、銀粉、ニッケル超微粉、はんだ粉などである。2006年の12品目の合計市場は、5万3,599トン、4,051億円で、今後は数量ベースで年率3.4%、金額ベースでは同8%程度で成長すると予測される。金額ベースの伸びが数量のそれを上回る最大の要因は価格上昇である。エレクトロニクス分野での利用が多く、微細化やハイブリッド化など求められる機能が年々高度化していることが高価格化につながっているとみられる。また、高機能化の進展も金額ベースの伸びが高い要因となっている。
金属酸化物の用途分野は限られており、超微粒子酸化チタンと超微粒子酸化亜鉛は化粧品主体で、UVカットニーズを背景に需要が拡大している。化粧品は1商品当りの添加量が少ないため、今後の市場拡大には他の用途開拓が必須となる。ITOターゲット材はディスプレイ需要に依存している構造で、ディスプレイ向け需要が好調なことから、順調に拡大している。
プラスチック(10品目:世界市場)
2006年 299億円 2010年予測 449億円(伸長率150%)
2006年の市場は1万2,376トン、約300億円で、今後ポリウレタン系、アクリル系、シリコーンの3品目が高成長し、2010年には2万4,478トン、約450億円に達すると予測される。
アクリル系は、拡散シートや拡散板など液晶パネル部材向けの光拡散材需要が市場を牽引している。液晶パネル向けは、販売量の拡大やパネル面積の大型化により急拡大している。また、建築塗料の耐久性向上のための添加需要の増加もアクリル系市場拡大に寄与している。
ポリウレタン系は、スラッシュ成形用の需要に牽引され拡大している。インストルメントパネルに代表される自動車内装表皮材向けに成形材料として使用されている。デザイン性の優れた設計が可能であり、2000年の初採用後、急速に浸透している。1回の使用量が多く、潜在需要が大きい有望市場と位置付けられる。
スラッシュ成形: 加熱した金型に微粒子状の樹脂をそのまま流し込み、金型の持つ熱で樹脂を溶融させ均一な薄膜表皮を作る成形法
シリコーン微粒子は樹脂添加剤や化粧品原料として用いられている。特に拡散板向けの光拡散材需要が急増しており、液晶パネルの需要増、パネル面積の拡大に伴い今後も拡大すると予測される。他のポリマー系微粒子と比べて高価格であるため、光拡散以外の用途は、シリコーンの機能を必要とする限定的なものと推測される。
ナノマテリアル(5品目:世界市場)
2006年 323億円 2010年予測 900億円(伸長率279%)
2006年の合計市場は305トン、323億円となった。ナノガラス、ナノダイヤモンド、金属ナノ粒子は、2007年以降に本格的に需要が立ち上がり、急成長が見込まれ、2010年の合計市場は983トン、900億円と予測される。
従来に無い機能付与から、ナノマテリアルの研究は産官学で活発に行われており、いずれも想定用途は多岐に渡っている。ただ、どの用途で需要が本格的に立上るか、実際に量産化できる用途はどれなのか、不確定な側面もみられる。対象としたナノマテリアルのうち、先行しているのはカーボンナノチューブ/ファイバー、フラーレンで、需要先が確立していないものの既に実績があり、好調に市場拡大している。カーボンナノチューブ/ファイバーは、プローブ探針、蛍光表示管、リチウムイオン電池用添加剤、樹脂複合材料、C/C複合材料などに採用されている。また研究開発用、サンプル出荷も多い。今後、特に電池用材料や樹脂複合材料に向けた需要が増加すると予測される。
フラーレンは、ボウリングのボールへの実用化から始まり、スポーツ用品、メガネフレーム、エアコン・エンジン用潤滑剤、化粧品等に使用されており、多目的な添加剤として徐々に市場が拡大している。今後も、低価格化と用途開拓により、市場は拡大すると予測される。
<調査対象>
* 関連資料 参照
<調査期間>
2007年1月~3月
<調査方法>
(株)富士キメラ総研専門調査員による調査対象・関連企業に対してのヒアリング取材及び(株)富士キメラ総研社内データベースの活用による調査・分析
以上
資料タイトル:「2007年 微粉体市場の現状と将来展望」
体裁 :A4判 284頁
価格 :97,000円(税込み101,850円)
調査・編集 :株式会社 富士キメラ総研 研究開発本部 第二研究開発部門
TEL:03-3664-5839 FAX:03-3661-1414
発行所 :株式会社 富士キメラ総研
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