NEC、障害復旧性能に優れたパケットネットワークの高信頼化技術を開発
NGN対応パケットネットワークの高信頼化技術を開発
~障害復旧性能に優れたリング単位のネットワーク拡張が可能に~
NECはこのたび、通信障害が発生しても高速に復旧できるキャリアクラスの高信頼性とネットワークの拡張性を兼ね備えた10Gbpsクラスの大容量でかつ高効率なパケット処理能力を持つメトロ(都市内)通信網(注1)を構築できるネットワーク高信頼化技術を他社に先駆けて開発しました。
このたび開発した技術は、高速障害復旧を可能にし、ネットワーク装置の高信頼化を実現するRPR(リング型パケット転送方式)(注2)のカード二重化技術や、二つのリング型ネットワークを複数のリンクで接続することでリング単位での高信頼なネットワーク拡張を可能にするインターリンク冗長化技術です。
メトロ通信網は障害復旧性能に優れた複数のリング型ネットワークで構成されますが、従来は固定電話向けに設計されたネットワークでした。このたびの技術により、ネットワーク装置の高信頼化が図れることに加え、高効率なパケット処理能力を持つ高信頼な伝送ネットワーク(パケットリングネットワーク)を、自由度の高いネットワークサービス適用エリアの拡張性をも満足しながら構築できるため、放送と通信が融合した広帯域映像配信サービスやFMC(注3)など、IP技術をベースとしたさまざまなサービスを提供できるNGN(次世代ネットワーク)の実現に向けて大きな前進となります。また、設備導入後はサービスの需要に応じて拡張するネットワーク設計が可能であり、通信キャリアネットワークにおける初期導入コストの低減やネットワークリソース配備の最適化が図れます。
このたび開発した技術の特長は次の通りです。
(1)ネットワーク装置におけるRPRのカードを二重化する技術と、カード間のパケット転送方法を最適化することで2枚のカードの両方を同時に動作させた状態のまま運用できる技術の開発により、カードに障害発生した場合でも高速に障害箇所を迂回し、通信継続を可能としました。ネットワーク装置の高信頼化実現とともに、2枚のカードを利用することで正常時において最大で従来の2倍(20Gbps)のクライアント収容も可能です。
(2)2つのリング型ネットワークを複数のリンクで接続するインターリンク冗長化技術の開発により、リング型ネットワーク間を接続するリンク部分での障害が発生しても50ms未満で障害復旧し、通信停止を回避できるため、高信頼にマルチリングネットワークを拡張できます。
近年、NGN(次世代ネットワーク)の構築へ向けて、国内外の通信キャリアはRPR技術をパケットリング技術として適用したマルチサービス・トランスポート装置の導入を進めています。RPRは単一のリング型ネットワークにおける障害発生時に宛先ノード単位にパケット送信方向(時計回り、反時計回り)を切り替える方式を適用しているため、イーサネットに比べて障害復旧性能に優れています。しかし、パケットリングネットワーク同士を接続するインターリンク部での信頼性を高める技術が実現されていなかったことがネックとなり、複数のパケットリングネットワークを相互に接続したマルチリングを通信キャリアネットワークに適用することはできませんでした。このたびの技術は、通信サービスの容量およびエリア拡大のために、二重化されたカードのパケット転送方法の最適化による装置の高信頼化に加えて、単一のリング型ネットワークと同等の信頼性を維持しながらネットワークを拡張したいという市場の要求を実現したものです。
NECでは、今回のパケットネットワーク高信頼化技術の開発が、メトロ通信網におけるさまざまなパケット通信サービスを高信頼にかつ効率よく収容するマルチサービス・トランスポート装置の製品化に大きく貢献できると考えており、本成果の各種装置プラットフォーム上での早期商品化を目指してまいります。
なお、本研究の一部は総務省の委託研究「次世代バックボーンに関する研究開発」プロジェクトの成果です。
以 上
(注1)エンドユーザからの加入者線(アクセスライン)を集線する複数のアクセス網および基幹網との接続を提供する幹線網のこと。主に都市圏を収容エリアとすることからメトロ網と呼ばれる。
(注2)Resilient Packet Ringの略。IEEE802.17で規定されるリング型ネットワークで、パケットを効率よく転送し、障害時にはキャリア網のSDH/SONET並みの高速障害回復(~50ms)も実現する伝送技術。3~5クラス優先転送制御、ノード間パケット公平性機能なども提供する。
(注3)Fixed Mobile Convergenceの略。固定電話と移動通信を密接に連携させる技術や、それを用いたサービスのこと。
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