デンソー、ハイブリッド車用の高出力パワーコントロールユニットと電池冷却システムを開発
デンソー、ハイブリッド車用に
高出力パワーコントロールユニットと電池冷却システムを開発
―レクサスLS600h、LS600hLに搭載―
株式会社デンソー(本社:愛知県刈谷市、取締役社長:深谷紘一)は、このほど、ハイブリッド車用の高出力パワーコントロールユニット(以下、PCU)と電池冷却システムを開発しました。今回開発した製品は、5月にトヨタ自動車株式会社が発売したレクサスLS600h、LS600hLに搭載されています。
■ 高出力PCU:
PCUは、ハイブリッド車の主電池の電圧(288V)をシステム最大電圧(650V)まで昇圧する昇圧コンバータと、直流電圧を交流電圧に変換し、ハイブリッド車の動力源となるモータを駆動するインバータから構成されております。車両の高機能化・高性能化に伴い、さらなるPCUの小型・高出力化が求められています。
PCUの高出力化のためには、PCUを構成する多数の半導体パワー素子(注1)のそれぞれを大電力化する必要がありますが、大電力化に伴う温度上昇をいかに抑制するかが課題でした。デンソーは独自の冷却構造を開発することにより、パワー素子の冷却性能を大幅に向上させ、パワー素子の大電力化を可能にしました。その結果、当社従来技術に比べてPCUの単位体積当りの出力を約60%向上させました。
同じ出力の場合には、体積を約30%、重量を約20%低減することができます。
従来のPCUでは、複数のパワー素子が放熱板を介して冷却器上に平面配置され、冷却器側の素子面のみが冷却されます(図1)。今回開発した冷却構造では、それぞれのパワー素子を一対の放熱板で挟んで、積層された冷却チューブの隙間に挿入することで、パワー素子の両面冷却が可能になり、冷却性能を大幅に向上することができます(図2)。また、この新しい積層冷却構造は、従来の平面配置構造に比べて小型化が可能です。
新しい積層冷却構造では、パワー素子両面が放熱板に直接接合されますが、デンソーは、パワー素子を薄型化することで接合部にかかる応力を軽減し、パワー素子とその接合部の高信頼性を確保しました。
このPCUは、パワー素子と冷却チューブの積層枚数を変えることにより容易に様々な出力のハイブリッドシステムに適用することができます。
(注1)半導体パワー素子は、トランジスタとダイオードからなる電流をオン・オフするスイッチング素子です。
■ 電池冷却システム:
新しく開発した電池冷却システムでは、ハイブリッド車の主電池を冷却するために、後席冷房用のクーリングユニットを利用しています。
レクサスLS600h、LS600hLではレクサスフラッグシップに相応しい静粛性が求められております。今回開発した電池冷却システムは、従来の電池冷却ブロワが使用している車室内の空気だけでなく、電池冷却ブロワがクーリングユニットで冷却した空気を使って主電池を冷却することができるため、従来の約2分の1の風量で同等の冷却性能を発揮します。これにより、送風騒音の約30%低減を可能にし、車室内の静粛性向上を実現しました。
レクサスLS600h、LS600hLに搭載されているデンソーのハイブリッド車用製品には、高出力PCU、電池冷却システムの他に、DC-DCコンバータ、電池監視ユニット、システムメインリレー、電流センサがあります。
ハイブリッド車は、今後、世界中でますます普及が進むと期待されています。デンソーは、1997年以来、様々なハイブリッド車専用製品を供給してきました。今後も、新技術・新製品の開発によりハイブリッド技術の進展に貢献していきます。
* 関連資料 参照
図1.従来のPCU冷却構造
図2.新しいPCU冷却構造