東芝、家庭内などの無線通信に適したミリ波通信用CMOS回路技術を開発
ミリ波通信用CMOS回路技術の開発について
民生向け、60GHzの高周波受信を実現
当社は、室内など近距離で高速・大容量の無線通信を行うミリ波通信について、通信用ICを民生向けに適した低コストのCMOS素子で形成する新技術を開発しました。
ミリ波通信は、無線LANの10倍以上にあたる60GHzの高周波を用いる無線通信です。電波の性質上、通信距離が数メートルに限られますが、国内で利用できる通常7GHzの広い帯域により毎秒1Gビット以上のデータ伝送が可能と言われます。近年、応用分野として、家庭内のデジタル機器間でハイビジョン映像を無線通信するなどが期待されています。
従来、ミリ波通信用ICでは、ガリウム・ヒ素基板など高周波向け専用の半導体やその他の専用部品等の実装による高性能化が必要でした。そのため、材料コストが高い、加工方法の異なるアンテナや発振器などを一体化できず大型化するなどの課題がありました。
これに対し、世界中の研究機関で、汎用的で低コストなシリコン基板を用いたCMOS素子によってミリ波対応の高周波ICを実現する開発が進められています。CMOS素子は、民生用・産業用のICに広く使われる汎用素子で、微細化により高性能化と複数機能の一体化が可能です。
今回当社は、高周波向けCMOS素子では最先端レベルの90nmプロセスを採用した高集積化・高性能化に加え、ノイズに強く高周波化に適した差動伝送方式による信号品質の改善や、素子構造や配線構成の最適化による内部ノイズの抑制などを通じ、大きな課題であった安定動作を実現しました。
これにより、アンテナやLNA(ローノイズアンプ)、PLL発振器など、ミリ波信号の受信に必要な回路を1.1mm×2.4mm(パッド部分を除く)の小型チップ上に一体化し、CMOS素子のみで安定動作するICを実現しました。
今回は受信機能を実現するものですが、今後、受信機能の更なる高性能・高集積化及び送信機能に必要な高出力化の追加技術などの開発を進め、ミリ波通信の送受信両方に対応したCMOS ICの早期実用化を目指します。
なお、今回の技術については、6月12日から京都で開催されている半導体の国際学会「VLSIシンポジウム」において、本日発表を行いました。