アキレス、有機ELディスプレーの長寿命化などに貢献する「ナノ分散PPy液」を開発
導電性ポリマー ポリピロール(PPy)の応用化技術で「ナノ分散PPy液」を開発
有機ELへの応用目指す
~有機ELディスプレーの長寿命化・大型化とコスト低減へ~
アキレス株式会社(本社:東京都新宿区 社長:中田 寛)は、電子共役系を有する導電性ポリマー、ポリピロール(PPy)を有機溶媒中にナノ分散する技術と、その技術を使った「ナノ分散PPy液」を開発しました。今後は、その技術を有機EL(*1)へと応用し、有機ELディスプレーの課題である長寿命化・大型化とコスト低減を目指した技術展開を行う予定です。
有機ELは、自発光することから、視野角の広さ、画像の美しさが際立っており、次世代のフラットパネルディスプレーとして大きな注目を集めていますが、現状の技術では大型化ができない、寿命が短い、コストが高いなどといった課題が残されています。
当社が今回開発した「ナノ分散PPy液」の有機ELへの応用化技術は、文部科学省のハイテク事業による私学助成を得て、東京工芸大学工学部・メディア画像学科・内田孝幸助教授の研究室と当社との共同研究によって開発したものです。「ナノ分散PPy液」を有機EL素子の正孔注入層(*2)へ組み込むことによって、上記のような従来の有機ELがもつ課題の解決が期待されます。
今回当社が新たに開発した「ナノ分散PPy液」には、寿命やコストに関して、以下のような特長があります。
◆現状使われている強酸性の水溶液ではないため、コーティング設備に対する腐食の問題がなく、有機EL素子の寿命に大きく影響する吸湿性の問題などが生じない。
◆溶剤組成、液粘度、固形分離濃度が自由に選択できるために塗布しやすく、塗布方法が選択できる他、コーティング後のフラット性が極めて良好である。
◆加熱乾燥されたPPyナノ粒子は、耐熱性に優れていることから、カーナビゲーションシステムなど車載用途等にも応用が可能である。
また、上記に加え、従来の技術に比べてコストを約10分の1へ低減することが可能と考えられます。
今後は、東京工芸大学内田助教授の研究室で開発中の有機EL材料を用いた透明フレキシブル両面発光デバイスへの応用展開を進める予定で、他企業との共同開発を進める準備も行っています。
なお、「ナノ分散PPy液」を用いた有機EL素子の発光特性、寿命などの研究結果については、来る8月29日(火)から滋賀県草津市の立命館大学びわこ・くさつキャンパスで開催される「第67回応用物理学会 学術講演会」で発表することになっています。
(*1)有機EL・・・有機Electroluminescence(エレクトロルミネッセンス)の略で、ガラスやプラスチックなどの上に有機物を塗布し、そこに電流を流すと、有機物が発光する現象である。これを用いることで自発光型ディスプレーができる。
(*2)正孔注入層・・・電極と発光層の間に位置し、電極から発光層にスムーズに正孔を注入させるためのもの。
《参考資料》(*添付資料参照)
〈有機EL素子の構造〉
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